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古い記事です。
ーーーーーーーーーーーーーー 一昨日はカノッサさんと鳳雛さんが我がゴミ屋敷に集って会合。その後焼き肉屋へ。2日連続でお酒を飲むなんて数年振りでした。すっかり酔っぱらってしまい(またか!)、階段登るだけでヒィヒィ言ってました。 そういえば、カノッサさんに私の日々の食事のことを心配していただきましたが、よく考えると、最近は栄養分を増やそうとインスタントラーメンの中に味噌(赤)を入れたりして結構気をつかってたりするので、野菜がインスタントラーメンの中に入ってるお湯で増えるやつしか無いことを除けば、かなり良い状態なんじゃないかと思ってみました。 それはともかく。 早く記事にしないと申し訳ないので、とりあえず読みましたから紹介させていただきます。 『タタールのくびき ロシア史におけるモンゴル支配の研究』 (栗生沢猛夫先生。東京大学出版会。2007年。8900円。437ページ) 目次を細かく書き出しておきます。 第1部 モンゴル支配の開始 第1章 モンゴル支配の開始 1・バトゥの侵入、2・最初の人口調査、3・ノヴゴロド 1257-1259年、4・北東ルーシ 1262年 第2章 モンゴル支配の構造 1・バスカク制、2・バスカク・アフマト、3・バスカクとダルーガ、4・バスカク制「終焉」の問題、5・モンゴル支配の性格--結論に代えて 第2部 アレクサンドル・ネフスキーとモンゴルのロシア支配 第3章 アレクサンドル・ネフスキー研究の歴史 1・これまでの研究におけるアレクサンドル・ネフスキー (1)A.H.ナソーノフ(2)ユーラシア主義者(3)B.T.パシュート等ソヴィエトの歴史家(4)Л.Н.グミリョフ(5)J.L.I.フェンネル 2・最近の諸研究 (1)В.А.クーチキン(2)В.Л.エゴーロフ(3)А.Н.キルピーチュニコフ(4)А.А.ゴールスキー(5)Ю.К.ベグノーフ 結論に代えて 補論 Л・H・グミリョフのエトノス史論とロシア 第4章 年代記に現れたアレクサンドル・ネフスキー 1・『ノヴゴロド第一年代記(古輯)』、2・『ラヴレンチー(スーズダリ)年代記』、3・『モスクワ--アカデミー年代記』、4・『ソフィヤ第一(古輯)年代記』、5・『1471年の全ルーシ的集成』、6・『モスクワ--ソフィヤ集成』、7・『15世紀末簡略年代記集成』、8・16世紀の諸年代記、とりわけ『ニコン年代記』、9・17世紀の年代記、10・B.H.タチーシチェフ 第5章 『アレクサンドル・ネフスキー伝』 1・『伝』刊行の歴史、2・『伝』の写本伝統--Ю.К.ベグノーフの研究、3・『伝』の成立--作者と執筆時期、4・『伝』と『ルーシの地の滅亡の物語』、5・『伝』の後代のテクスト、6・聖者伝としての『伝』 第6章 史的アレクサンドル・ネフスキー 1・アレクサンドル・ネフスキー年表の作成、2・アレクサンドル・ネフスキー年表、3・アレクサンドル・ネフスキーとモンゴル--結論に代えて 第3部 ロシアとモンゴル 第7章 ロシア史におけるモンゴル支配の意味 1・ユーラシア派とモンゴル支配、2・モンゴルの侵入による被害の程度の問題、3・モンゴル支配の影響の問題、4・モンゴル支配の意味--モスクワ的専制とモンゴルの影響の問題、5・結語--ロシア史における東と西 付録--史料邦訳 1・『シメオーノフ年代記』(6791-6792年) 2・アレクサンドル・ネフスキー関連年代記記事 (1)『ラヴレンチー(スーズダリ)年代記』(6745-6770年)、(2)『ソフィヤ第一年代記(古輯)』(6736-6771年)、(3)『ニコン年代記』(6736-6771年) 地図(2点) 系図(ルーシ、キプチャク・カン) 日本におけるロシア中世史の代表的研究者の一人である栗生沢猛夫先生の新刊です。翻訳や論文はいくつもありましたが、本だと『ボリス・ゴドノフと偽のドミトリー』以来だとしたら10年振り? いつの間にかこの本が出てたと知って、矢も楯もたまらず、一万円札を握りしめて走り出した15の夜。(ぇー はじめ、ジュンク堂で本棚見た時見つけられなくて、本棚に一冊分のスペースが隙間になってたから、誰かに先を越されたのかとか思って焦りました。PCで検索して一冊だけあるはずだと確認してやっと見つけました。よかったー。最近は一回刷って絶版というのも多いそうですから・・・。 内容は、中世ロシアの君主で、聖人であり英雄でもあるアレクサンドル・ネフスキーについてで、今までに栗生沢先生が研究したものの集大成といった感じの本になっています。前書きに、ここ10年ほどで書かれた論文を基にした、とあります。 目次を見てもらえればわかりますが、モンゴル軍の西征の経緯とそこからはじまる「タタールのくびき」の初期の時代について、ネフスキー研究の状況や各種年代記を比較などをしながら、実態に迫っています。 普通の人でもエイゼンシュテインの映画『アレクサンドル・ネフスキー』とかロシアの勲章の「アレクサンドル・ネフスキー勲章」くらいなら知ってるかもしれませんが、思ったよりもメジャーな人物じゃないみたいですね。自分内知名度は高かったのですが・・・。まあ、知名度はともかく自分も実際のアレクサンドル・ネフスキーについてはあまり知らなかったので、目からうろこが連続で出てきました。 入門書ではないですが、かなり楽しんで読むことが出来ました。栗生沢猛夫先生の冷静で的確なものの見方、理にかなった手順と考え方がとても良いです。 あと、付録の年代記の邦訳がたまらなかったです。あー、是非とも『ノヴゴロド第一年代記』と『ラヴレンチー年代記』はちゃんと翻訳したの本にして欲しいですね。(確か『ノヴゴロド第一年代記』だったらどっかの大学の紀要で一部載ってたはず。) 普通の人がこれを読むにあたっての最短コースは、山川出版社の世界各国史の『ロシア史』→同じく山川の『世界歴史大系 ロシア史1』→『タタールのくびき』かな? 無茶? 1番はじめは中央公論社の『世界の歴史11 ビザンツとスラヴ』から? その前にさらに手軽なのを入れた方がいいか。 ちなみに知ってる人だけでも3人がこれを手にしてます。武藤さん、ひでさん、大鴉さん。さらに他の知り合いも買うんだろうな~。 アレクサンドル・ネフスキーが大公となってからいたウラジーミルとかは、私めも旅行したことがあります。 http://www.toride.com/~digxwa/digxwaFiles/tabif/tabi_rus10.htm あと、ネフスキーがスウェーデン軍や騎士団をやっつけた時にいたノヴゴロドも行きました。 http://www.toride.com/~digxwa/digxwaFiles/tabif/tabi_rus09.htm まあ、ここらへんの歴史的観光については、洞窟修道院の奥野さんのとこの「ロシア歴史紀行アルバム」が凄いです。 そうだ。 奥野さんがこの前キエフ行った時の写真がアップされてるので、これは必見。 http://www.toride.com/~roshiashi/album83.1.html http://www.toride.com/~roshiashi/album84.1.html 「洞窟修道院」の写真もあります。 1240年にモンゴル軍が押し寄せて陥落し、廃虚と化したこともあるキエフ・ルーシの都。『ロシア原初年代記』に出てくる場所とかが! うーん、うらやましい。 どうでもいいことですが、amazonの和書検索で『ボリス・ゴドノフと偽のドミトリー』が著者名で出てこないから変だな~、と思ったら、名前が「栗生沢猛生」になってたりする。生が2回。 おまけネタ。 YouTubeで「Татар」といれたら出てきたイヴァン雷帝ネタのCM? Ivan Grozniy IV http://www.youtube.com/watch?v=k8oDi4QKR8s Tamerlan http://www.youtube.com/watch?v=cuic-9lcuXw&mode=related&search= Konrad III http://www.youtube.com/watch?v=FjVoW5f-TPw&mode=related&search= Eralash - Ivan Grozny i sin http://www.youtube.com/watch?v=JyOBw86rFtY&NR なにこれ・・・・。 この記事へのコメント 「ロシア史におけるモンゴル支配の研究」などと副題をうたれたら、もはや無条件購入決定でしょう(笑) ただ、内容がちょっと「ネフスキー」に偏りすぎな気もしますが。(タイトルと比べて) ネフスキー親子の受難(?)のサライ、そしてカラコルム行き・・・とくに「4年」かかった(ソフィア年代記の空白によると)らしいネフスキーのカラコルム行きは、是非詳細が知りたいですねぇ。誰も同行者がいなかったのか、モンゴル側(カラコルム)での記録はないのか、いろいろ知りたいことばかり。 ジュチ家と帝国本家の関係とかはわかるけど、モスクワと帝国本家の関係なんてのはよくわからないし・・・。(いや、バトゥと本家の仲には疑問符もあるが) Posted by 大鴉 at 2007年02月14日 23:11 こんばんわー 今、読んでますよ なかなか進みませんが(^^; 来週には読み終わるかな あ、ロシア史は最近読んでないぞ(^^; Posted by 武藤 臼 at 2007年02月14日 23:31 (蒸しぱんさんのコメントがありました) Posted by 蒸しぱん at 2007年02月15日 00:53 (蒸しぱんさんのコメントがありました) Posted by 蒸しぱん at 2007年02月15日 00:58 いやー、読んでみたい。しかし8900円か…日本は本が高いんだなあ、ということを改めて実感。ロシアも随分高くなりましたが、ここまでのことはないと思います。 というか、日本は学術書が高いんですよね。ロシアの場合、サイズが大きくて写真がたくさん載っていると値段が上がることが多い。ある意味非常に分かりやすいです。その一方で、装丁が質素だと学術書でも意外に安く売っていたりします。まあ、最近は歴史の専門書自体が減ってきているような印象もありますが。 蒸しぱんさんも書かれていますように、モスクワ公国初期の歴史は確かに面白いと思います。この分野に関しては、『タタールのくびき』の研究史でも触れられていますが、アントン・ゴルスキーという研究者がいちおし。いや、僕もそれほどたくさんの書物を読み込んだわけではないのですけどね。この人の『モスクワとオルダ』(2000年)などは、概説としてもよくまとまっているし、視点が多角的で興味深いと感じました。 僕が人生の中で研究書を物することなどはできないだろうから(だいたい研究などしてないし)、せめて訳くらいはしてこの世に恩返しをしたいと思っています。できるかなあ…せめて1冊くらい…志だけはあるんですけどね。頑張ってみます。 Posted by 奥野 at 2007年02月15日 06:22 >内容がちょっと「ネフスキー」に偏りすぎな気もしますが。(タイトルと比べて) たぶん、出版社側としてはあまり知られてない人名より、まだ取っつきやすそうなタイトルにしたかったのでは? まあ、「タタールのくびき」という言葉自体、どれほど知られてるかは謎ですが。 >モスクワと帝国本家の関係なんてのはよくわからないし ここらへんは、モンゴル側からの研究書が出て欲しいものですね。それで多角的に見るようになって少しはわかってくるのでは。 しかし、西方のモンゴル史の研究なんて日本ではやってる人いるのでしょうかね。 >さらに西からのリトアニア勢力の関与という構図の中で 確かにリトアニアとの関係とかはほとんど載ってないですから、そこらへんの話はちょっと物足りなかったですね。まあ、モスクワの外交史を総合的に扱うとなると大変でしょうが。 >日本は本が高い 研究書の類いは、5000円オーバーでも当たり前ですからね〜 この『タタールのくびき』が高いのは、たくさん刷ってないからでしょうが、まあ、「買う人はどんな値段でも買う」種類の本ですから。 >翻訳 いや、ほんと、是非是非やってください。じゅ、需要はあります! 一部の人種にですが。 >ロシア史は最近読んでない 私もです〜。もっと集中して読まないといけないのですが、他にも読むのが多すぎて・・・。 >ゴルスキー 本の中では、この人の書いた『祖国』という雑誌に掲載された『アレクサンドル・ネフスキー』という記事と、『ルーシの地よ、御身はよろずのものに満ちている・・』(2000年)が取り上げられています。 『モスクワとオルダ』はタイトルだけでも興味そそられますね。 あと、どうでもいいことですが、翻訳された『イヴァン雷帝』を見てても思いましたが、栗生沢先生は人名を音引きで伸ばすの好きですね。表記の癖は作家ごとにありますが、この場合は伸ばし派。 Posted by 管理人・馬頭 at 2007年02月15日 12:00 (むしぱんさんのコメントがありました) Posted by 蒸しぱん at 2007年02月16日 01:54 いやいやほんと、「人生目標」くらいですよ。日本に帰ったらもっと忙しくなるだろうし…でも、やってみたいとは思っています。そして、訳したい書籍の何と多いことか。 『モスクワとオルダ』は、章ごとに初代ダニールからイヴァン3世までのそれぞれの公を取り上げ、その対汗国政策について検証しています。一方、『タタールのくびき』でも取り上げられているという『ルーシの地よ、御身はよろずのものに満ちている・・』は、イーゴリ・スヴャトスラヴィチ(「イーゴリ軍記」の主人公)からドミトリー・ドンスコイに至る、すなわちキエフ時代末期からモスクワ初期の歴史の中で特に注目される数人の公を取り上げた、やはり列伝形式の内容となっています。ゴルスキーはこういうスタイルが好きなんでしょうか。 Posted by 奥野 at 2007年02月16日 14:55 >取っつきやすそうなタイトル いや、内容は初心者にはとてもついていけないのでは・・・という気が。 映画のネフスキーなんてなんの参考にもならないし(笑) >せめて1冊 その一冊に期待する方がここにも一人・・・。 Posted by 大鴉 at 2007年02月17日 00:38 >翻訳 多分、他に翻訳しようとする人がいないかも? >初心者にはとてもついていけない ちょっと基礎知識が必要ですよね。これ。 Posted by 管理人・馬頭 at 2007年02月17日 06:20 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 参照サイト 北海道大学 http://www.hokudai.ac.jp/ 北海道大学スラブ研究センター http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/ 東京大学出版会 http://www.utp.or.jp/ タタールのくびき(東京大学出版会サイト内) http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-026130-2.html カノッサの屈辱 http://www.toride.com/~canossa/ 宦官列伝 http://www.toride.com/~fengchu/ 洞窟修道院 http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/6218/ HISTORIA http://pezetairoi.hp.infoseek.co.jp/index.html バルト~エーゲ海への道 http://www002.upp.so-net.ne.jp/kolvinus/ 西夏史への招待 http://homepage2.nifty.com/seika-shi/ 貂主の国 http://blog.goo.ne.jp/north_eurasia 関連記事 奥野さんの記事「バトゥのロシア遠征」も載ってる。『コマンドマガジン』vol.79 チンギスハン特集 http://xwablog.exblog.jp/8099527 ヴォルガ・ブルガール史で見えてくる周辺地域との繋がり。梅田良忠氏『ヴォルガ・ブルガール史の研究』 http://xwablog.exblog.jp/7387555 ウクライナの聖なる秘宝を巡るサスペンス。イーヴリン・アンソニー『聖ウラジーミルの十字架』 http://xwablog.exblog.jp/8628542 オスプレイのCampaign Series『カルカ河畔の戦い 1223年』他、カルカ河畔の戦い関連 http://xwablog.exblog.jp/8694245/
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