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そもそもマレンコフって誰?って状態だったのに読んだ『マレンコフのソ連』の書評
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2006年04月30日
そもそもマレンコフって誰?って状態だったのに読んだ『マレンコフのソ連』

マレンコフ時代のソ連について書いた本『マレンコフのソ連』を読みました。
昭和29年(1954年)に出た本で、書いたのは戦前からソ連に駐在していたアメリカの記者シャピーロ。

マレンコフのソ連


『マレンコフのソ連』
(H・シャピーロ。原子林二郎/訳。時事通信社。1954年。160円)
「新たな大改革が行われている! スターリン方式を180度転換したといわれ、国民の熱狂的歓呼をあびているといわれる新政策、マレンコフ新風とはなにか! 著者は滞ソ16年のソ連通、医師団陰謀事件・ベリヤ粛清問題・スターリンの急逝などをめぐる知られざる秘話をおりこみつつ、生まれ変わるソ連の近情を見事に浮彫りにしている。」(帯紹介文より抜粋。)

米ソの関係が緊張していた時代でありながら、アメリカ人が書いたにしては結構ニュートラルで冷静な視点で書かれています。


そもそも、マレンコフなんて歴代ソ連の国家元首の中では一・二を争うほど知名度が低いというのに、何故かいきなり読み始めてしまいました。
マレンコフは1953年のスターリンの死後首相になり、その後フルシチョフと対立して1955年には首相をやめてしまいます。この本は丁度その辞めるまでの短い期間に書かれたもののようです。
もともとスターリン時代が酷かったわけですから、マレンコフ政権がやることは「改善」しかなかったのでしょう。マレンコフ本人はスターリンなどに比べ、現実を見据えた実利主義者だったようですし、ソ連市民の評判はなかなかよかった様子。

そういえば、マレンコフはスターリン時代に計画されていた国家的大事業計画をいくつか廃棄してますが(トルクメン幹線運河といった運河事業や森林化改造計画)、ソビエト宮殿の建設を止めたというのもありました。ソビエト宮殿というと、世界最大最高層の建造物を目指したもので、巨大なレーニン像を戴く形をしているというユカイな代物です。まるでファンタジー世界の魔王の城みたい。
『マレンコフのソ連』によると、「わたしはソヴェトのインテリゲンチャ、作家や美術家、建築家やジャーナリストのうちで、審美眼からしても、また実際の機能からしても、『ソヴェトの宮殿』の建設に賛成していたものを、ただのひとりも発見できなかった。」とのこと。やはり、当時の人も嫌だったみたいです。
このソビエト宮殿は戦争前から建設がはじまってたそうですが、戦争中には建設は中止され、鋼鉄の骨組みはなんと対戦車障壁に転用されたそうです。
結局、スターリン死後に計画は棚上げされ、その後跡地は温水プールとなり、さらにエリツィン・プーチン時代に元々あった救世主キリスト聖堂が再建されるわけです。(救世主キリスト聖堂についてはうちのサイトの旅行記の三日目を参照)

当時の社会状況なども見えて、なかなか面白い本でした。

>マレンコフ
ソ連の政治家。1920年に共産党員となり、組織内で一貫して人事を担当。46年から57年まで政治局員。スターリンの死後首相となり、その後継者と目されたが、反党事件に連座して57年に失脚した。
(『角川 世界史辞典』P913より抜粋。)

載ってた笑い話。
「ねえ、ヴァシーリィ・ペトローヴィッチ、市民がのこらず自家用の飛行機をもてる時代がくるぜ」
「わしは空を飛ぶのは嫌いじゃね。それに飛行機など、なんの役に立つのじゃね?」
「だから、あんたはだめなんだ。ウラジヴォストークに卵があるとでも聞いてごらん、飛行機にとびのって、スッと飛ばせば、あくる日の朝飯には、卵を食べられるという寸法さ」


参照サイト
ソ連建築のページ(英語)
http://www.muar.ru/ve/2003/moscow/index_e.htm

Posted by 管理人・馬頭 at 03:20 |Comments(0) |TrackBack(0) | ロシア・CIS , 本 , 歴史

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君は速水螺旋人を読んだ事があるか!?『速水螺旋人の馬車馬大作戦』という名を持つ本の形の果てしない世界
http://xwablog.exblog.jp/8611488
ソ連の学園ものはこんないい話だ。『ヴィーチャと学校友だち』という記事
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by xwablog | 2006-04-30 04:17 | 書庫
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