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メッツ司教クロデガングの会則が語るなさけない教会内部のだらけっぷり。という記事
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2006年03月06日
メッツ司教クロデガングの会則が語るなさけない教会内部のだらけっぷり。

八世紀のメッツの司教クロデガングは、フランク王国の貴族出身で、カール・マルテルやピピンに仕え、メッツの司教に任じられて王国の教会改革を指揮した人物です。
彼はメッツの司教となった後、そこでの聖職者のだらけっぷりがあまりにも酷いので、アウグスティヌス会則やベネディクトゥス会則をもとにして「司教座聖堂参事会会則」というのを作って、聖職者たちに規律にそった清廉な生活をさせようと努力しました。この時作った戒律はのちにフランク王国全土に普及するわけです。
この会則を翻訳した「メッス司教クロデガングによる司教座聖堂参事会会則 Regula Canonicorum 試訳」(梅津教孝氏)が『史学雑誌』第92編第10号に載ってまして、これが読んだらとても面白かったので簡単に紹介します。
ちなみに本日3月6日が列聖されたクロデガングの祝日です(768(766)年死去)。
クロデガングは冒頭に「・・・聖職者と信徒とが非常に大いなる怠慢に陥ったことを知ったので、私は打ち拉がれ、なすべきことを求め始めた。しかし、神の御助力によって支えられ、霊友たちの慰めによって助けられ、必要に促されて、それによって聖職者が禁じられた事から自らを抑え、悪習を捨て、長い間行われていた悪事を完全に放棄する小さい規則を作ろうと私は思った。」(試訳より抜粋)と書いているように、当時の教会が本来あるべき姿を見失っていたようで、それに対処するために作った規律がこの会則です。クロデガングはこの会則の中で、聖職者たちの生活について語るのですが、これが細かいことを色々指示していて、とても面白いです。
眠る時は一緒に寝ないといけなくて、居住区に女性や料理人、俗人男性も招くな、と言っています。つまり堕落した聖職者たちは、女性や料理人を呼んで飲めや騒げやの生活をしていたのでしょう。
お祈りをする時間には走ってでも聖堂に集まれとか書いてあるのは、祈りに来ない怠け者がいたからでしょうし、不平を言わずに労働せよ、と言っているのは、与えられた仕事に不平不満を言う人がおおかったからでしょう。
幾章にもわたって、さまざまな罰則のありようを書いてあるのは、そういったことが必要だったからでしょうね。罰則の与え方や裁くための手順、破門の仕方とかも書いてあります。
こうした会則の中でもとくに気になったのは、食べ物に関する規則がとても多いこと。食卓での作法や食事の方法、食事の内容や量についてもしっかり書いてあります。笑ったのは各人が飲むぶどう酒の杯数まで書いてあることで、しかも酩酊に注意しろ、と何度もかかれています。
「葡萄酒を飲まないように説得することは私たちにはできないので、少なくとも彼らにあっては酩酊が支配することがないようにということに同意しよう。」(試訳より抜粋)
禁酒そのものが無理という状況だったようで、すでに諦めてますね。

こうした規則に違反した人物は罰を与えられるわけですが、1回目や2回目は説諭されるだけで済みますが、それでも改めないと人々の前で怒られたり、破門されたり、禁錮の罰があったり、さらに驚いたことに体罰が与えられたりします。しかも、それは「その他の者たちが恐れをいだき、そのような罪に陥らないようにするためである。」と何度も言ってます。そこまでしないと駄目だったのか・・・。

でも、こうした罰則はあるものの、病にかかった聖職者に対するさまざまな免除規定や快癒のための処置まで書いてあったり、支給品は上位者が配慮してどうにかするよう書かれていたりと、罰則だけを書いただけのものでは無いのです。

これの中で興味を引いたものの中に、守門(門番)についての一章があります。
「守門は一人であり、その下位者と共に、一年間、あるいは司教が良しと認めた場合にはそれ以上、居住域の門、即ち入口を守らねばならない。守門は質素で忍耐強く、賢く、応接の心得があり、忠実に門、即ち居住域の入口を守らねばならず、この趣旨に反してはならない。」
門番の素質についてまで言及するこの一文は、つまりよっぽど街に遊びにいっちゃう聖職者がたくさん居たんだろうな〜と想像させます。門番といえば袖の下、とか思ってましたが、この門番はかっこいいぞ。

会則から見えてくる当時のだらけきった風潮とそれに対するクロデガングの姿勢が色々と楽しい試訳でした。

Posted by 管理人・馬頭 at 11:11
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書影ははじめから無い。
by xwablog | 2006-03-06 02:01 | 書庫
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