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11世紀の天文学者にして詩人、オマル・ハイヤームの生涯を描く。映画『ロスト・キングダム スルタンの暦』
最近、レンタル屋で借りようと思ってるDVDに、第2次世界大戦中にナチスによってポーランドの古城から復活させられたガーゴイルが戦闘機と戦う『ガーゴイル・トゥルーパーズ』というのと、イラク駐留中の米軍が古代遺跡から復活したマンティコアと戦う『マンティコア vs U.S.A.』というのがあって、どっちにしようか迷ったけど、こんなの見つけてしまったので、こちらを借りてみました。

ロスト・キングダム スルタンの暦

『ロスト・キングダム スルタンの暦』

(アメリカ映画。ジェネオン エンタテインメント。ゼイリブ。監督/カイバン・マサイーク。出演/ブルーノ・ラストラ、ラデ・シェルベッジア、モーリッツ・ブライブトロイ、 C・トーマス・ハウエルほか。2005年。81分。3990円)
「現代のアメリカ・テキサスに生きる少年カムランは、イランの伝承を伝える一族の末裔であり、重篤の兄ナデルの見舞いに行くたびに、自らの先達たるペルシアの学者オマル・ハイヤームについて尋ねるのだった。11世紀に生まれた少年オマルは、12歳で父を亡くし、高名な学者の弟子となり研鑽を重ねる。しかし、青年になった頃、隣家の奴隷で親しくしていた少女ダリヤが遠方へと売られてしまい・・・」

グレゴリウス暦より正確なジャラーリー暦を作った11世紀のペルシアの数学者・天文学者で、『ルバイヤート』を詠った詩人としても知られる、オマル・ハイヤームの映画です。原題は『THE KEEPER: THE LEGEND OF OMAR KHAYYAM』。
映画の中では、話が二つ交互に進行する形で、セルジューク朝時代のペルシア、ニーシャープールに生まれ(ちなみにマリクシャーはイスファハンに遷都してるので、舞台はイスファハンのはず)、マリク・シャーのもとで天文学者として活躍したオマル・ハイヤーム(ウマル・ハイヤーム)の生涯についての物語と、現代に生きる少年の自分の由来に関しての探求の物語が描かれていきます。
まさかこんな映画があるとは驚きですが、この日本語版のタイトルつけた人は、もうちょっと考えてタイトルつけるべきでした(笑) 。はじめ、ファンタジーものかと思ったほどです。
現代編と中世編が交互に語られていくのですが、現代編では少年カムランが自分のルーツと「ルバイヤート」を求めてイギリスに、そして祖父のいるイランへと行きます。中世編ではオマルの成長、彼の子供のころからの友人、奴隷の少女ダリアと、戦士階級の家系に生まれた少年ハサンたちとの友情と恋愛の話、マリク・シャーに仕えてからの出世、その業績などが語られ、友人ハサンとマリクシャーの対立、失われた初恋の奴隷娘ダリヤとの再会が話を盛り上げていきます。いや、盛り上げてって言うけど、実はそんなに盛り上がりはしません。しょうがない。だって天文学者の生涯と少年の旅行じゃーな(笑)
ちなみに11世紀のペルシアでの場面は、全部英語で話しています。

今回映画のこと調べてて知ったことで面白かったことがいくつかあります。
『ルバイヤート』の語源についてで、古代アラビア語の「ルバイ」は「4」の意味があるそうで、11世紀のペルシア詩人にとって「ルバーイイ」は四行詩のことを指すようになったとか。
「ハイヤーム」が「天幕造り」の意味で、オマルの父親が天幕職人だったんじゃないかということ。
オマル・ハイヤームの伝承で、彼の学友に宰相となったニザーム・アル・ムルクと、暗殺教団の創始者ハサニ・サッバーフがいるという話があるということ。物語の中でも友人ハサンは反マリク・シャーの頭領として台頭していくという風に登場しますが、ニザーム・アル・ムルクは最初から老人の宰相としてマリク・シャーに仕えています。
当時の社会では高名な学者の元で学んだ人物たちは誰もが栄誉を得ると信じられてたとか。
あと、中世の美麗な『ルバイヤート』の写本があったけど、タイタニック号とともに沈んだとか。

まあ、ともかく、こういう映画なんてのもあるんですよ、ということで。

参照サイト
ロスト・キングダム/スルタンの暦<未>(2005)(allcinema)
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=332954
ウマル・ハイヤーム
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%
83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%A0
マリク・シャー(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%AF
%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC

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