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手先は器用だけど生き方は不器用な、英雄にしてエンジニア。『カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男
『カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男』

『カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男』

(エレナ・ジョリー/聞き書き。山本知子/訳。朝日新聞出版。朝日新書106。2008年。740円。245ページ)
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凡例
はじめに--恐怖と栄光の日々
第一章 隠された悲劇
第二章 一介の兵士から銃器設計者へ
第三章 AKの誕生
第四章 唯一の武器
第五章 ソ連・ロシアの指導者たち
第六章 祖国と外国
第七章 雑記
訳者あとがき
カラシニコフ略歴

世界でもっとも普及しているカラシニコフ自動小銃。そのシリーズの一番はじめ「AK47」の設計者であるミハイル・チモフェエヴィチ・カラシニコフが、娘レナの友人で、パリで活躍するジャーナリスト、エレナ・ジョリーに話した彼自身の物語です。
1919年、革命後のロシア・アルタイ地方で生まれたカラシニコフが、一家のシベリア送りや、第二次世界大戦への従軍を経て、自動小銃の設計に取り憑かれ、1947年に、ついに開発したAKがソ連軍に制式採用される成功物語と、そしてそれからの人生がここで語られています。
彼の語りの調子もあるのでしょうが、当時のソ連が見舞われた悲惨な出来事の中でも、たくましく、目標に向けてひたむきに頑張る青年の姿がありありと浮かびます。
これは銃器や軍事や歴史に興味がある人だけではなく、カラシニコフが何かほとんど知らない人でも、十二分に楽しめる一人の男の一代記ですよ。超オススメ。

本当は『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ)を買いにいったのですが、売り切れててなかったので、こちらを読むことにしました。
カラシニコフについての本というと、少し前に出た『カラシニコフ』『カラシニコフII』(松本仁一)がありましたが、こちらの自伝はまさに本人の語りそのものですので、より楽しめますよ。松本本はカラシニコフ自動小銃についてのルポタージュですからね。
しかし、朝日新聞出版め。この本を今になって翻訳して出したのは、カラシニコフ本が売れると踏んでのことなのか?(この本自体は2002年にフランスで出版されました。だから山本知子氏はフランス語の翻訳者。革命などで大量の亡命者がフランスに渡ったため、仏露の関係は深い。この前記事書いた『レーニンをミイラにした男』も同様のパターンですし)

ちなみにこんなのも買ってみた。

『Guns of Kalashnikov カラシニコフの銃器たち』

『Guns of Kalashnikov カラシニコフの銃器たち』

(ホビージャパン。ホビージャパンMOOK235。2008年。1800円。128ページ)
カラシニコフ・ライフルとロシアの軍用銃
ロシア最強特殊部隊 ザ・スペツナズ
ロシア最大の武力都市
ロシア/ソビエト軍用銃とその歴史
Arsenal
AK74MN徹底解剖!!
AK CUSTOMGUN & ACCESSORY

フルカラーでさまざまなAKを紹介してくれます。さらにカラシニコフ氏本人へのインタビューも掲載(ちょっとだけですが)。なかなか楽しいムック本。
似たようなやつで、『カラシニコフライフルとロシア軍の銃器たち』というのも、ホビージャパンから出ています。


ところで、『カラシニコフ自伝』の方ですが、いろいろ印象的なシーンや台詞があったのですが、本筋とはちょっと外れてるものの中での一番笑えたのが、社会主義労働英雄称号授章の電話の時の話。

「余談になるが、この「社会主義労働英雄称号」に別の意味で感謝していることがある。国防相のウスチノフから授章の知らせを告げる電話があったとき、私は左のわき腹と背中にひどい痛みを覚え、痙攣のために体を二つに折り曲げている最中だった。腎疝痛の発作だったのだが、私は大の注射嫌い、医者嫌いのため、病院だけには絶対に行きたくなかった。そのときも大切な電話がきたということで、病院行きをあやうく免れた。カーチャが私の代わりに病院に行き、医者の診断を仰いできた。そして、ウスチノフ国防相の電話から三時間後、私は医者の助けを一切借りずに自力で、激痛の原因となっていた腎結石を排出した。英雄称号を二度も授けられたる者、肉体の不調も己の力で克服しなければならないのだ。」

ちょっと待てぇい! そんなワケあるかぁっ!!(笑) 二度授章で医者いらず、ってか!?
ほんと、どうでもいい話ですが、この話大好き。てか、そもそも、この人、本気で言ってるのか、やっぱ冗談なのか?

まあ、それはともかく『カラシニコフ自伝』は、波瀾万丈の人生、そして頑固で実直で目標のために何もかもかけて突き進む男の生き様、さらにはソ連という国が体験した凄い時代を感じられる、非常に面白い本でした。


参照サイト
朝日新書
http://publications.asahi.com/original/shoseki/shinsho/soukan/
カラシニコフ自伝(Object Insiders)
http://maglog.jp/object-insiders/Article299622.html
AK-47
http://ja.wikipedia.org/wiki/AK-47
カラシニコフ自伝
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=9332
カラシニコフ自伝(よみうり堂)
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20080519bk06.htm

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