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極北の地を遺伝子工学が生み出した超戦闘犬がひた走る! 谷口ジロー『ブランカ』と『神の犬』各2巻
谷口ジロー『ブランカ』第1巻

『ブランカ』第1巻

(谷口ジロー。小学館。小学館文庫。1999年。571円。273ページ)
「凍結したベーリング海峡を越えてアラスカにやってきた一匹の白い犬・ブランカ。この通常の犬の能力をはるかに越えた存在であるこの犬を巡り、密猟者や学者、アニマルトレッカー、そして日本人・シバが巨大な秘密に巻き込まれていく・・・」

谷口ジロー氏が、祥伝社の「マガジン・ノン」に1984年から1986年にかけて連載した作品。連載時から大幅加筆されているとのこと。
遺伝子工学によって人工組成された戦闘犬ブランカが、ソビエト連邦内のR(エール)共和国の研究所を抜け出し、はるかアメリカのニューヨークにいる飼い主の孫娘に会うため走りはじめます。もともとはアメリカに亡命したリャプコワ教授によって作られたのですが、リャプコワ教授はR共和国によって拉致され、戦闘犬の開発に協力させられていました。しかし、彼はブランカだけは逃がし、孫娘のパトリシアの元へと向かわせます。
アラスカに入ったブランカを機密保持のために殺そうとするR共和国は、密猟者などを雇って狩らせようとするのですが、これはブランカの戦闘能力によってあっさりと失敗してしまいます。この時巻き込まれた密猟者の日本人・シバは、ブランカのことで恋人を殺されるなど散々な目にあってしまい、ブランカに恨みを抱くようになります。また、ブランカを一目見てその魅力に取り憑かれた動物生態学の女学者ヘレンも、ブランカを追いはじめるのです。そして、R共和国も、他人を使ってではなく、秘かに直接兵隊を送り込んで本格的に殺そうとします。東へ東へと行くブランカ。かれを追って人びとの思惑が錯綜していくのです。

なによりも犬でしかないブランカの犬を超えた活躍が非常に楽しい作品でした。カリブーよりも速く長時間走り、跳躍は河をも越え、もっとも『銀牙--流れ星銀』みたいに喋ったりはしませんが。冷戦ネタだし、1980年代の時代的なテイストが入ってて、なんだか懐かしく感じられた作品でした。
それにしても、ソ連をただ「ソ連」にして簡単に扱うのではなく、「R共和国」というソ連の一共和国を使って描いているのは珍しいし感心しますね。どうやら「R共和国(エールとルビがふってありますが、もちろんアイルランドとは関係無しです)」は、ソ連のしかものちの展開ではロシア連邦内の一共和国という設定みたいです。このR共和国のシュミット大佐が、ロシア共和国に対する主導権争いで勝利するために、すさまじい能力を持った戦闘犬を必要とし、研究させていたという設定。「バカな。犬ごときで国家同士の駆け引きを有利にするか」など思うかもしれませんが、ブランカの能力はもう、犬とかどうとか言う問題じゃないですよ。確かにこれならば、とか思わせ・・・・いや、やり過ぎか? (笑)
まあ、それはともかく、シュミット大佐の野望も、最終的に特殊部隊を派遣してまでのブランカ追撃に失敗することで潰えるのですが、実はこの漫画、続きがあります。

谷口ジロー『神の犬』第1巻

『神の犬 DO』第1巻

(谷口ジロー。小学館。小学館文庫。2000年。571円。272ページ)
「カナダでついに死んでしまったブランカ。しかし現地の狼を母として彼の子供が生まれていたのだった。それを知ったシュミット大佐は、その仔オオカミ犬の捕獲をめざし、ついに一匹の黒いオオカミ犬・タイガを捕えることに成功する。戦闘犬として育てられるタイガだが、そのころあの捕獲網を抜け出していたタイガの兄弟ナギは、囚われたタイガを求め、西へと移動を開始する・・・」

今度は、あれから少したった時期の話。ちょうど、ソ連崩壊の後が舞台になってるので、1990年のことみたいです。ということは前の『ブランカ』は1989年だったってことになりますが、まあ、『神の犬』は1995年から1996年に『ビッグコミック』で連載されたものなので、後付け設定かも。
こちらの方でも、シュミット大佐やワーレン中尉、ヘレンやニック、といった前のシリーズの登場人物が出てきます。前ので重要なキャラだったシバは登場しなくなりますが、同じく日本人で、研究者のケンが登場。
話の方は、タイガとナギの兄弟が、西と東からお互いを求めて移動をし、シベリアで戦わなくてもいいのに戦わざるを得ないことになってしまいます。戦いの舞台がサハ共和国というのが渋い。


参照サイト
小学館
http://www.shogakukan.co.jp/
軍犬(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8D%E7%8A%AC
谷口ジローの街(ファンサイト)
http://www.jiro-taniguchi-fan.com/

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