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2000年に入ってからの漫画業界のことについて。21世紀初頭の展開と今後
これは古い記事です。
2006年02月05日のこと。
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2000年に入ってからの漫画業界のこと

昨今の漫画業界の動向を、自分の見える範囲でまとめてみました。

すっかり書く時期を逸してしまいましたが、スクエアエニックスの『ヤングガンガン』で連載中の作品『死がふたりを分かつまで』のことから。
盲目の剣士が活躍するこの作品は、たかしげ宙氏(ストーリー担当)とDOUBLE-S氏(作画担当)による合作ですが、『死がふたりを〜』と同様にたかしげ宙氏が話を書いてる講談社の『マガジンZ』で連載中の『緑の王』の単行本四巻発売と合わせて、同時に「ヤングガンガン&マガジンZ合同 たかしげ宙作品フェア」というのをやってました。「たかしげ宇宙に酔え」をキャッチフレーズに両方の雑誌のみならず、両社の姉妹誌でも広告入れるなど、結構いろいろ手を尽くしてやってるみたいです。
講談社だけで、とか、スクエアエニックスだけで、とかなら分かりますが、違う会社同士で手を組んで同一の原作者の作品を取り上げたフェアをやる、ということだったのでちょっと気になりました。今までは確かにこういったのはあまり見ませんでしたが、最近の新たな手法としてこれからも使われるかもしれません。今のところ、こういった出版社共同企画のフェアで他に覚えてるのは大暮維人氏の『エアギア』(講談社)と『天上天下』(集英社)とか鈴見敦氏の『はりだま退魔塾』(講談社)と『Venus Versus Virus』(メディアワークス)くらいですが、他にもありそう。
出版社としては他社との競争の他に共同することも戦略として使われるようになったのかもしれません。



最近の漫画業界の流行りとしては単行本や雑誌にフィギュアやストラップ、CDやDVD、小冊子や同人誌、オリジナルアイテムといった「オマケ」を付けるのと、かつての名作の続編や作り直しといったものが目立ちますが、これや先程書いた合同フェア的なものを含め、2000年以降の新たな流れが見えるような気がします。

ほんの一昔前の90年代における漫画業界の大きな流れといえば、「メディアミックス」だったと思います。今となってはもう当たり前となってしまって、意識すらしませんが、あのころはこれだったかと。
では、2000年前後からの流れは何なのか? となると、やはり自分には「ボーダレス」が特に目立つ動きなんじゃないかと思います。そして同時に、それとはまったく逆の動きである「細分化・専門化」が進んでいっているのも重要な動きでしょう。
「ボーダレス」的な動きとしては、今まで少女漫画・少年漫画といったものには性別ごとの読者層があったものが、男女ともに気にせず読み出し(90年代からあったが最近は特に)、それが薄れてきたこと。読者層の性別が曖昧になったのと同時に、作者が少年誌少女誌を越えて描くようになったこと(少年誌が特に女性作者を積極的に受け入れはじめた。橘裕氏や惣領冬実氏とかみたいに進出する人もいる)。あと、18禁の漫画を描いていた作家が有名誌に来るというのはこれもやはり90年代からありましたが、18禁も描きつつ他の全年齢でも描くという作家が増えたのもボーダレスの一貫じゃないかと。女性向けエロ描く人が男性向けエロ描いたり、その逆パターンも近ごろ良く見かけます。そしてなにより、同人誌の市場が拡大するとともに同人誌と商業誌の境目も曖昧になってきています(同人誌からかき集めて作ったようなアンソロジーとかが山ほど出てる)。それにはパソコンの普及や印刷技術の向上も絡んでるかと思います。
まあ、あと前述の合同フェア的なものも。
だいたいのものは他の時代にもあったでしょうが、やはり2000年に入ってから急速に進んだように思えます。
これに「細分化・専門化」と言えるような動きが足されます。雑誌がより特定の読者層を狙うようになり専門誌も増え、また漫画の内容もかつては「冒険」「格闘」「SF」「ファンタジー」といった分類で事足りましたが、今では「メイド」やら「巫女」やら「メガネ」やら「電車」やら「細菌」やらで分類し、特定の世界に限定した「本格ナニナニ漫画」の類いが増えました。漫画家側のネタが切れてきたとかじゃなく、漫画業界が拡大し、さらに読者の成熟が進んだ結果、漫画家がさらに一歩踏み込んだものを作りたくなり、またそれを受け止めることが出来るようになったため、特定のものに絞ってもやってけるようになったということかもしれません。近ごろの漫画家さんは話の作りこみが上手いですしね。

こうした「ボーダレス&スペシャリゼーション」は反対の動きのようにも見えますが、実は受け入れ体制ができた業界での流動化が現れたものなのではないでしょうか? もっとも、ボーダレスが進んだからといって、少年誌少女誌の垣根がなくなったり、スペシャリゼーションが進んだからといって各漫画分類ごとが断絶するわけでもないですが、そういった動きは今後もさらに進むことになるでしょう。

なんとなく思いついたことを書いただけなので、まったく見当違いのことを書いてるかもしれませんが、とりあえず。
(かつての名作の続編や作り直しについてはまた別のとこで。作り直しは「リメイク」じゃなく、続編と合わせて「リサイクル」ぐらいを脱していない状況とかについて書ければ・・・)


この記事へのコメント

(蒸しぱんさんのコメントがありました。

>漫画を読んで育った世代が50歳代にまで及んだ時代だという点
それもありますね〜。読者・作者ともに高年齢化して、漫画業界の人材が多層化した、というのも今後の動きにかなり影響するかと。
ウチのバイト先にも五十近いけど、毎日とらのあなとまんがの森に漫画チェックしに行くような中江さんていう人がいますよ。エロ同人誌も買ってるみたいだし、彼のようなおたく文化どっぷりな人がおじさん・おじいさんになっていくと、どうなるのか? というのは興味深いです。

>合同企画
さいとうたかをもですか〜
あと、あかほりさとる氏のサイン会が今度あるんですが、講談社の『神to戦国生徒会』と角川書店の『かしまし』の合同企画みたいですよ。

>絵のレベル
これも漫画業界の成熟が進んだ結果じゃないかと。読者がかつてのような内容では満足しなくなったというのもありますが、今まで作者が表現しても理解できなかったものが理解するようになったことでより作者側がそれに応える形で描くようになったという感じでしょうか。あと、上手い作者の影響を受けて作者になった人の絵はあきらかにそれに準じて上手いものになりますから、そこらへんの相乗効果というものではないでしょうか。

かつてあったカテゴリーの枠を越えて活躍する作家のことを、どうやら「越境作家」と呼んだりするようです。
ラノベの世界でも確かに、一般書、文学への進出ともいうべきことがありました。


                                       管理人馬頭。

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昔のブログの時、いくつかのサイト様でこれの記事を取り上げていただきました。ありがとうございます。

参照サイト
のべるのぶろぐ・「越境」するライトノベル
http://novel.no-blog.jp/minkan/2005/10/post_884b.html

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by xwablog | 2006-02-05 01:45 | 日記
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