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歴史家たちの歩んだ人生とその業績を集めた本。刀水書房『20世紀の歴史家たち』世界編・上下巻
池袋_暗雲_20070428

連休のはじまり。昨日は雨が降ってどうなることかと思いましたが、今日はいい天気ですね。まあ、私はほとんど家から出ないでしょうが。同人誌の記事とHPの方の記事を書かないと。

左の写真は、昨日、池袋に行った時に撮影したもの。ちょうど雨が止んだ時間帯に移動してたのですが、今にも降りそうな暗雲とサンシャイン60、その向こう側に見える明るい空のコントラストが素敵でした。
しかし、改めて写真で見ると、池袋の街が爆撃か何かで燃えているようにも。


それはともかく。
この前、『イヴァン雷帝人名辞典』を作った時に、歴史家たちの記事が細かくかけなかったので、ちょっと気になって読んでみました。

20世紀の歴史家たち世界編_刀水書房

『20世紀の歴史家たち』(3)世界編 上

(編者/尾形勇&樺山紘一&木畑洋一。刀水書房。刀水歴史全書45-3。1999年。2800円。印刷/亜細亜印刷。製本/山田製本印刷)

この本の上下巻で紹介している歴史家たちは次の通り。
各人の業績などについて全然知らなかったので、ちょっとまとめてみる。

>アンリ・ピレンヌ
言わずと知れたベルギーのヨーロッパ中世史家。中世都市とかを研究。第1次世界大戦では逮捕され、終戦まで収容所へ。
>フリードリヒ・マイネッケ
プロイセン出身のドイツ史学界の重鎮。ドイツ国民の形成や国家と思想の相互関係について研究。1944年7月の反ヒトラーのクーデターに関知。「国家理性」「文化国民」「国家国民」という言葉を作った、もしくは広めた人。
>ヴェルナー・ゾンバルト
ドイツの歴史家。マルキシズムや歴史上の経済活動と心性の影響について研究し、「資本主義」という言葉を今的な意味ではじめて使った人。
>ラモン・メネンデス・ピダール
スペインの中世史家。エルシド研究で有名。
>梁啓超
早熟の天才で同郷の康有為の右腕。日本に亡命。「史界革命」をとなえた。「奴隷
根性」という言葉を作った人。
>リチャード・ヘンリー・トーニー
インド生まれの英国人。イギリス農業史など。成人教育(生涯教育)の推進者。
>ワシーリー・ミハイロヴィチ・アレクセーエフ
ロシアのシナ学の研究者。ニコライ・ネフスキーの師匠。この記事、どーいうわけか、アレクセーエフじゃなく、ネフスキーのことばかっかり書いてある。
>アンリ・マスペロ
フランスのシナ学の研究者。エジプト史の研究者の息子で、自身もプトレマイオス朝の著作がある。その後は東南アジア史・中国史関連が多い。息子は対ナチのレジスタンス活動家で、逮捕されドイツの収容所で終戦直前に死亡。来日経験有り。
>アーノルド・ジョゼフ・トインビー
イギリスで最も有名な歴史家。メディアによく登場して活躍。基本はギリシャ・ローマ史が専門。「文明」を歴史単位として重視し、そのサイクルやリズムについて記す。池田大作との対談とかもある。創価学会の出してる『第三文明』やら、『比較文明』って雑誌のタイトルもこの人の影響?。「産業革命」という言葉を作った同名のアーノルド・トインビーはこの人の叔父。
>R・E・ウィーラー(モーティマー卿)
イギリスの考古学者で、軍人。インド史学界の創設者。ローマ史、南アジア史などが専門。ナイトを叙勲される。
>E・H・カー
ロンドン生まれの歴史家。イギリスの外交官。国際政治の研究者。『ドストエフスキー』『カール・マルクス』『ミハイル・バクーニン』なども書いた伝記作家。『ソヴィエト・ロシア史』の著者。講演の記録『歴史とは何か』も有名。
>カール・アウグスト・ウィットフォーゲル
ドイツの歴史家、アジア研究家。中国の経済・社会史をマルクス主義的に論じる。治水が人々を組織したという「水の理論」や、中国史における北方の騎馬民族の影響についての「征服王朝論」で有名。
>ノルベルト・エリアス
ユダヤ系ドイツ人で、ナチス時代に亡命。歴史家としては遅咲きで、かつ特異。日常的出来事から社会構造や社会心理を読み解く。『宮廷社会』が有名。
>フェルナン・ブローデル
アナール学派の「法王」。フランス歴史学界の大人物で、歴史学そのものの変革者。ドイツ国境近くのフランス北東部で生まれたユダヤ系フランス人。第二次世界大戦ではライン戦線で1940年に捕虜となり終戦まで収容所。その収容所で『フェリペ二世時代の地中海と地中海世界』を書き上げたという。著作に『地中海』や『物質文明、経済、資本主義』。
>侯外廬
中国古代史・中国思想史の研究者。『資本論』の中国語訳をはじめて行った人物。抗日運動の活動家。
>ヴォルフラム・エーバーハルト
ポツダム生まれの民族学的・社会学的な中国史・中国文化研究者。反ナチ反共の自由主義者。中国の周辺地域との関係にも注目。著作に『中国文明史』など。
>エリック・E・ウィリアムズ
トリニダード・トバゴの黒人で、独立運動の活動家から初代大統領に。当時まったく周辺の出来事として見向きもされなかったカリブ海交易の世界史への影響などを書く。奴隷貿易の衰退は、砂糖プランテーションの衰退による経済的要因だとし、いわゆる人権の影響・人道主義ゆえの「優れた白人の人間性が奴隷制度をなくした」という信仰を痛烈に批判。ヨーロッパにおける産業革命も、黒人奴隷の苦難から生まれた利益なくしてはあり得ないとする。
>フィリップ・アリエス
フランスの日曜歴史家。昔のヨーロッパにおける子供がどう見られていたのかについての本『子供の誕生』など、家族感情の歴史や心性についての本がある。
>楊寛
中国の古代史研究家で、公汎な知識の持ち主。文献考証に優れ、技術・制度・思想などの歴史を本にしている。
>マニング・クラーク
オーストラリアの最も有名な歴史家。シドニー生まれ。オーストラリア史そのものを確立。テレビの人気者。
>エリック・ホブズボーム
エジプトのアレクサンドリア生まれのユダヤ系イギリス人。子供時代はウィーンで成長。ナチス時代になってイギリスに移住。共産主義者。イギリスの労働史や産業についての著作がある。
>ウィリアム・H・マクニール
カナダ生まれのアメリカの歴史家。『西洋の勃興』などで、技術の伝播主義による文明論を書く。文明の興亡に技術面の影響が重視されている。
>マリウス・B・ジャンセン
アメリカの日本研究の重要人物。彼の家はオランダからアメリカに移住した一家。第二次世界大戦時代に陸軍に志願して参戦。途中で命令として日本語の勉強をさせられることに。その後、明治維新史などを研究。
>V・P・ダニーロフ
ソ連の農民史研究者。オレンブルグ州出身。第二次世界大戦では砲兵。終戦後、大学で学び、さらにモスクワで大学院生となるも、学校の政治的理由でネップ時代の研究などを行うことに。不遇。
>ミシェル・フーコー
各界に影響を及ぼしたフランスの思想家。構造主義的哲学者。著作に近代における排除の理論などを書いた『狂気と非理性』や『監獄の誕生』など。
>ナタリ・デイヴィス
ユダヤ系アメリカ人で、社会史や文化史を研究。フランス近世などが中心。
>エドワード・W・サイード
この前亡くなってしまいました。ヨーロッパ人たちの中東・アジアなどを下に見る独善的かつ自己正当化の視点・史観を批判したパレスチナ人。『オリエンタリズム』が有名。
>ロナルド・タカキ
日系二世でハワイ出身。アメリカのマイノリティーを扱った研究が中心。

ここからは下巻(4巻)

>マーク・オーレル・スタイン
シルクロードの探検家として有名。ブダペスト生まれのハンガリー系ユダヤ人。インド学で文献研究で多数の業績があり、またヘレニズム文化の東方への伝播を研究。アレクサンドロス大王の遠征の足跡を追った研究も。カブールのアメリカ大使館で病没。
>マックス・ヴェーバー
ドイツ・エルフルト生まれの政治家の息子。ヨーロッパ経済史の研究者で、プロテスタンティズムが資本主義の形成について書いた『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は、各方面に多大な影響を与えた。
>ワシーリー・ウラジーミロヴィチ・バルトリド
ペテルブルクのドイツ系ブルジョワとして生まれ、ペテルブルク大学東洋語学部に入学。その後、ロシア東洋学の研究者として大成。中央アジアにも行って各地を調査。名著『モンゴル侵攻期のトルキスタン』など、著作多数。
>ヨハン・ホイジンガ(ホイジンハ)
オランダ出身で、ライデン大学の教授となり、第一次世界大戦の後にその名を世に知らしめた『中世の秋』を書く。ヨーロッパ中世史における20世紀最大の歴史家とも。1940年、ドイツによって拘束され、強制収容所に送られ、45年に病死。
>ジョルジュ・ルフェーヴル
フランスの歴史家。フランス革命時代の経済史・農政史の研究者。著作に、史料の緻密な調査によって書かれた『ノール県の農民』など。
>リュシアン・フェーヴル
フランスの歴史家・編集者。マルク・ブロックの盟友で、『アナール』の前身を創刊。16世紀ヨーロッパ史の研究者。
>マルセル・グラネ
フランスの中国史研究者。古代の社会史、思想史などが専門。『詩経』の農民的性質に注目。
>マルク・ブロック
アルザス系ユダヤ人の教育者の家系で、熱心なユダヤ教徒。フェーヴルとともに『アナール』を作る。ヨーロッパ中世史研究では『王の奇跡』『封建社会』『フランス農村史の基本性格』といった大作を記し、歴史人類学、社会史学に影響を与える。第二次世界大戦には歩兵大尉として参戦。フランス降伏後は地下組織「自由射手」にて指導的役割。1944年にゲシュタポによって逮捕され、銃殺。
>陳寅恪
中国史の碩学。江西省の医者の家系。アメリカとドイツに留学し、サンスクリット語、パーリ語、チベット語を学ぶ。その後、北京清華学校の先生に。魏・晋・南北朝・隋・唐の歴史、そして仏教史の研究において業績。晩年は不遇。
>顧頡剛
蘇州の名家出身。中国古代史の研究者。
>ハミルトン・アレクサンダー・ロスキーン・ギブ
エジプト・アレクサンドリア生まれのスコットランド人。母親は長老派教会付属学校の教師。現代的なイスラム・中東史研究の生みの親。アラビア学・セム語研究の権威。
>エルンスト・H・カントロヴィチ
プロイセン領だったポーゼン(ポズナニ)生まれのドイツ系ユダヤ人。家はポズナニでも有数の実業家。家業の酒造を継ぐつもりだったが、第一次世界大戦で陸軍砲兵隊に配属。戦後、ベルリン大学、ミュンヘン大学で学び、はじめはイスラム研究などを行う。その後ヨーロッパ史に関する本を書く。著作の『皇帝フリードリヒ二世』はワイマール時代のドイツで最も読まれた歴史書。ナチス時代にイギリスに亡命。また他の名著『国王の二つの身体』を記す。
>シュロム・ドヴ・ゴイテイン
ドイツ生まれのユダヤ人。もとはハンガリー系ユダヤ人のラビの一家。中世イスラム史、経済史の研究者。イスラム世界のユダヤ商人が残したゲニザ文書を調査し、当時の経済について詳細な研究を行う。シオニズム運動に参加し、イスラエル建国後はヘブライ大学に勤める。しかし、のちに米国へ移住。
>ジョゼフ・ニーダム
イギリスの生化学者にして歴史家。中国の科学技術史の大著『中国の科学と文明』を書く。フランシス・ベーコンの言うヨーロッパの三大発明がすでに中国にあったこと、しかしなぜ産業革命や近代科学が中国で起こらなかったか、などを説く。
>ジョン・キング・フェアバンク
アメリカの中国史研究者。中国とアメリカの関係に注目。
>ダーモーダル・D・コーサンビー
インドのゴアに生まれた歴史家にして思想家。マルクス主義者で平和運動家。多才で知られ、数学などの研究もある。インド古代史では、仏教史、サンスクリット語研究、古銭学など。
>アルナルド・ダンテ・モミリアーノ
イタリアのユダヤ人。トリノ大学で学びトゥキュディデスについて論文を書く。その後、教授になるもファシズムの台頭でイギリスに職を得る。両親はドイツの強制収容所で死亡。ヘロドトス研究をはじめ、古代史に関する膨大な研究業績があるものの、日本での紹介は遅れている。
どうでもいいですが、この紹介文を書いた木村凌二氏は塩野七生氏の『ローマ人の物語』の駄目さ、歴史叙述の恣意性に対して非常に批判的に書いてますが、あんなのより先にモミリアーノを!と言いたいのでしょう。
>エドウィン・O・ライシャワー
アメリカ人の宣教師の息子として日本で生まれた。日本を西洋に紹介した日本史研究者。日本の封建制をヨーロッパの封建制に似たものととらえて考えた。また、日本の封建制は近代化を阻害ではなく助長したとも。日本の近代化と、その後の戦争に至る失敗の原因を探った。
>陳夢家
中国のキリスト教徒の息子として生まれ、中央大学卒業後、外国に留学。帰国して甲骨文字・古代金文・青銅器の研究などを行う。晩年は不遇。基本的に中国の史家は、文革のせいで大概、晩年は不遇となる。
>モーゼス・フィンリー
ユダヤ系アメリカ人でニューヨーク生まれ。名門のユダヤ人の家系。マルクス主義の影響を受け、古代ギリシアの奴隷制の研究や古代経済史の研究を行う。現在のギリシア史研究家には彼の弟子が多い。
>ハリル・イナルジク
トルコの歴史家で一家はクリミア・タタールの家系。オスマン帝国史における最大の研究者。マルクス史観やアナール派の影響を受けた。西欧の東洋観から語られたオスマン史を覆し、オスマン帝国発展の原因を説明。
>エドワード・パーマ・トムスン
イギリスの歴史家。父はリベラルだったが、兄とエドワードは共産党員。兄は、第二次世界大戦でバルカン半島の反ファシスト運動に将校として参加して捕らえられ、処刑されている。エドワード自身も参戦し、ユーゴスラヴィアに従軍。イギリス近代史を研究し、『イングランド労働者階級の形成』を書く。「モラル・エコノミー」「ラフ・ミュージック」「磁場」などの用語を使う。核廃絶、平和運動家。
>アーロン・ヤコヴレヴィチ・グレーヴィチ
モスクワ生まれのユダヤ人。ロシアの中世ヨーロッパ史研究家。『中世文化のカテゴリー』で名声を博す。イギリス初期中世史の研究からはじめ、後に北欧史、とくにバイキングについて研究を行う。著作に『バイキング遠征誌』『エッダとサガ』など。ソヴィエト時代にも活躍。
>エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリ
フランスの中世史家。アナール派の第三世代の旗手。『モンタイユー』が大ベストセラーとなる。心性史、社会史で鋭い研究を多く残し、農業史経済史を気候環境の点からも研究。
>ハンス・ウルリヒ・ヴェーラー
ドイツの歴史家。第二次世界大戦の時は終戦間際、13歳で国民少年兵として参戦。ドイツ帝国などのドイツ近代史の研究者。
>レイナルド・C・イレート
マニラ生まれのフィリピン人。近代フィリピン史の研究者で、オリエンタリズム批判を行う。


この記事書くためにもう一度読みながらだったから、えらい時間がかかりました。
ともかく、人に歴史有り、歴史家に歴史有り、といった感じで非常に面白かったです。激動の時代といえばそれまでですが、多くの歴史家さえもが歴史的な流れの中でドラマチックに生きているのを見ると、なんだか考えさせられます。
また、いろいろな主義主張、論説といったものが、その人の生き様から出ているというのをより強く感じた一冊でした。

この『20世紀の歴史家たち』のシリーズは日本編を含めて全5巻で、去年完結したようです。

この本を読んでから、ここで紹介された歴史家の著作がむしょーに読みたくなりました。何から読もうかな。


なんか、この記事書いてる間中、ずっと鼻の中がくすぐったく&痒くてたまりませんでした。鼻毛がさわさわする。

参照サイト
刀水書房
http://www.tousuishobou.com/

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