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『コンスタンチノープル征服記 第四回十字軍』 (ジョフロワ・ド・ヴァルアルドゥワン。訳・註/伊藤敏樹。筑摩書房。1988年。2987円。259ページ) 序文(ジャン・デュフゥルネ) 地図 コンスタンチノープル征服記 註 解題 詳細目次 関係年表 文献案内 地名索引 人名索引 13世紀初頭、第四次十字軍に参加したシャンパーニュ伯の家臣の中でも上位の家老(マルシャル)だったヴァルアルドゥワン(ヴィルアルドゥアン)が書いた「公式記録(報告書)」的な読み物。彼はモンフェラート家のボニファッチョの顧問として活躍しました。 1198年にヌイイのフゥルクが十字軍を呼びかけるところから、1205年にラテン帝国の皇帝となったボードワン1世(元フランドル伯)がブルガリア軍との戦いで死亡するまで116章に分けて、13世紀初頭の第四回十字軍を企画者・参加者の側から描いています。第四次十字軍についてはロベール・ド・クラリの著作もありますが、こちらのヴァルアルドゥワンのものは、極めて指導的立場に近い位置にいた人物の書いたものとして興味深いものがあります。 私的に面白かったのは38章のイサキオス2世とフランク側の会見の様子。 「こうして使者らは城門まで案内され、開門されると馬を降りた。ギリシア方は城門よりブラケルナイの本殿にかけて、斧を手にしたイングランド人、デンマーク人を配していた。こんな具合で本殿まで導かれ、そこでイサキオス皇帝-----御衣の豪華なこと、これにすぐるものはまずなかろう----と、傍らにおわす皇妃に拝謁した。この方はそれは美しく、ハンガリア王の妹君であった。」(P71より抜粋。) ノルマン人の近衛兵(ヴァリャーギ)がまだいるのですよ。メンアットアームズの『ビザンティン帝国の軍隊』によると、彼らが莫大な金を見返りに皇帝アレクシオス3世を裏切り、フランク側・新皇帝アレクシオス4世側にについたとのこと。このことはこの『コンスタンチノープル征服記』には書いてないですね。城壁にたくさんのイングランド&デンマーク人がいて、果敢に守ったことが書かれてます(35章)。彼らの給料は一月に10〜15ノミマスだそうです。 だいたいが本当にイングランド・デンマークの人だと思うけど、中にはルーシ系の人もいたろうな。当時のキエフ・ルーシとビザンツ帝国のつながりってのはどの程度だったんでしょうね〜。すでにドニエプル経由の交易が下火になってた時代とも言われてますが、まったく無くなったなんてこともないでしょうし。1218年にはルーシはキエフに亡命していたイヴァン・アセン2世を支援してブルガリアに軍隊送ってますし、それくらいの繋がりはこっちの方ともあったはず。当時のキエフ大公はスモレンスク系のムスチスラフ剛胆公。つまり1223年にカルカ河畔の戦いでルーシ諸侯軍を率いて死んじゃう人ですね。なんか、援軍とか出すくらいだから、ブルガリアの隣国といってもいいくらいのガーリチ系かと思ったのに(ちょうど混乱してたからそんなことできなかった?)。 ここらへん、日本語資料がなんもなくて困ります。 この『コンスタンチノープル征服記』は、現在、講談社学術文庫から新装版が出てますね。 ちょっと前に『第四の十字軍 コンスタンティノポリス略奪の真実 』という緑色の表紙の本が出ましたが、まだまったく読んでません。いつか東欧・バルカンものの同人誌を作るときには絶対必要になるだろうけど、買ってもない。 参照サイト 筑摩書房 http://www.chikumashobo.co.jp/ 講談社 http://www.kodansha.co.jp/ ビザンティン帝国同好会 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Labo/9837/ 関連記事 バルカン半島の略史を写真などをたくさんつけて解説。柴宜弘『図説 バルカンの歴史』 http://xwablog.exblog.jp/7900953 長い間、中世ブルガリア史における最大の情報源でした。恒文社『ブルガリア 風土と歴史』 http://xwablog.exblog.jp/8006536 オスプレイのCampaign Series『カルカ河畔の戦い 1223年』他、カルカ河畔の戦い関連 http://xwablog.exblog.jp/8694245/ 奥野さんの記事「バトゥのロシア遠征」も載ってる。『コマンドマガジン』vol.79 チンギスハン特集 http://xwablog.exblog.jp/8099527/ 映像が50分も追加されてます。blu-ray『KINGDOM OF HEAVEN(キングダム・オブ・ヘブン) ディレクターズ・カット版』 http://xwablog.blog20.fc2.com/blog-entry-283.html
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