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戦国時代の貿易を通してみる日本史。武光誠『海外貿易から読む戦国時代』。けど、ちょっと断定的過ぎ。
ゴミ収集の人が燃えるゴミの日にゴミを持ってき忘れたみたいで、ゴミ置き場に置きっぱなしでした。で、その次の日の燃えないゴミの日に全部持ってかれてました。
持ってき忘れなんて初めてみました。まあ、ゴミ置き場が大きな塩ビのケースになってるから中見えないんですよね。そのせいかも。

それはともかく。
海外貿易が日本史への影響に焦点を当てた新書。

海外貿易から読む戦国時代_武光誠

『海外貿易から読む戦国時代』
(武光誠。PHP研究所。PHP新書。2004年。720円。装幀/芦澤泰偉&野津明子。印刷/図書印刷)
序章・鉄砲伝来と時代の転換
第一章・「悪党」の時代から戦国動乱へ
第二章・倭冦とポルトガル人
第三章・ヨーロッパ中世の終末
第四章・世界に進出するヨーロッパ人
第五章・ヨーロッパ人の大失策-----鉄砲伝来
第六章・南蛮貿易と西国の繁栄
第七章・戦乱の加速と織田信長の天下とり
第八章・日本経済を主導した織田信長
第九章・織田信長の外征計画
終章・ヨーロッパの変貌と鎖国

これ、前にブックオフで見かけて、立ち読みした時にちょっと面白いなー、とか思ったので、この前ちゃんと買ってみたのですが、通しで読んでみたら印象がかなり変わりました。
海外との交易が、中世・戦国の日本経済に与えた影響が大きかったという点と、織田信長が非常に先見の明を持った人物であり、経済を握って戦国を制したという点を特に強調する本となっています。
海外との貿易に焦点を当てるという点は面白かったし、それが与えた影響、ところどころで出てくる面白い事例などを知れたのは良かったかと思いますが、なんというか、全ての変革・革新は海外貿易に有り、という偏ったイメージと、織田信長が海外貿易(そして異国の存在)に影響されて行動し、全てにおいて先進的な人物であった、というイメージが、何度も何度も繰り返されていて、その表現もかなり強引な感じがしました。

「織田軍団は、当時の日本では最強であったが、かれらの持つ武器の質だけでいえば、信長の手兵の装備は世界一であるといってもまちがいではない。」

なんか、信長が凄い凄いって褒めたいがためにいろいろ無理な比較とかしてまして、長柄鑓を使う信長の軍隊と『三銃士』の時代のルイ13世のマスケット銃兵を比較して、「そのうえ、ヨーロッパの歩兵は、長柄鑓に対抗できる武器を持っていない。(中略)。長柄鑓とサーベルで戦えば、長柄鑓をもつ者が勝つことは明らかである」とか書いてます。
え? えーと、パイク兵とか、スペイン軍のテルシオとかって知ってます?

まあ、西洋史に関してはかなり怪しい部分がありますが、この本の話自体はなかなか楽しく読むことは出来ました。(どれくらい正しいこと言ってるのか不明ですが)
語り口が分かりやすく、言いたいこと伝えたいことは単純なので、細かいネタや、視点の面白さも含め、全体的に口当たりがいい、とでもいいますか。つまらない本ではありません。
倭冦の話とか、火薬の原料の輸入の話とか、面白かったです。
当時、倭冦には日本人があんまりいなくて、でも、倭冦って呼ばれてたらしい。わざわざ日本人の髪型にしてたりとかまでしたとか。明朝は海賊退治を行ったらしいけど、この本では、そこまでの流れをヨーロッパ商船の出入りのせい、としているのはどうでしょうね。
あと、火薬の原料である木炭・硫黄・硝石の中で、硝石だけは日本でとれなかったので、インドなどから輸入したとか、あと鉄砲用の良質の鉄をわざわざタイから輸入したとか、なんか戦国時代のイメージが変わるなぁ(硝石はのちに日本国内でもとれる「塩硝」というのを使ったりもしたそうです。これって前に『もやしもん』で出てきた農家の床下からとれるやつのこと?)。そういや、日本は火山国なだけあって、硫黄がたくさんとれるんですが、それを15世紀だかもっと前だかから輸出していたそうです。何に使うんでしょうね?

やはり、自分としては西洋史部分の怪しさや、強引かつ思い込みで言ってるみたいな断言や、理想的君主的信長イメージにはちょっと引きましたが、そこらへんから、この本自体が少々怪しく見えるというのはあります。日本史詳しくないので、ここらへんが、どんくらい正しいのか判断しかねますし。
だから感想としては、面白いけど怪しいかも、くらいでとどめておきます。


>PHP研究所
「PHP研究所(ピーエイチピーけんきゅうじょ 英:PHP Institute)は、松下電器産業の創業者である松下幸之助によって創設された出版社・民間シンクタンクである。」(wikipedhiaより抜粋。)

何ですかPHPって?とか思ってましたが、PHPとは「Peace and Happiness through Prosperit」(繁栄によって平和と幸福を)の略とのこと。日本の出版社は東京のそれも一部地域に集中してるのですが、これは京都に本社がある珍しい出版社。
しかし、「出版物の内容は概して保守的」と書かれてるのですが、この『海外貿易から読む戦国時代』は、そういう意味でなのか、話の締め方が、「日本の未来を憂いてます。織田信長みたいな経済に明るい人が強力な指導力を発揮していかないと駄目ですね」という感じになってました。うへえ、とか思ったけど。


そうだ。
『カラシニコフライフルとロシア軍の銃器たち』という本が出てますね。内容確認したいな~。どっかで見れないかな。

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この記事へのコメント

前にどこかでご紹介したことがあるかもしれませんが、信長関連本では小島道裕『信長とは何か』(講談社選書メチエ356、2006年)が面白かったですよ。
織田信長をむやみに持ち上げたりはせず、かといって「残虐な独裁者」と切り捨てることもなく、その事績を様々な切り口から客観的に分析していく態度に好感がもてます。最終的には信長に対してかなり否定的な結論となるのですが、その一方で信長を非常に人間くさく描き出しているという希有な一冊。文章も平易で読みやすいものでした。研究者として優れているばかりでなく、筆力のある人なんだと思います。
Posted by 奥野 at 2007年03月14日 05:11

武光誠氏は日本史ものをあちこちと書き散らしてますが、中国史からの引用がボロボロだったので最近は読んでないです。馬頭さんの感想読むかぎり新しい情報も少なさげ・・・
硫黄というとどちらかというと、琉球王国の輸出品というのが思い浮かびます。硫黄って火薬だけでなく昔は医薬品でもあったんじゃなかったっけ?(うろおぼえ)

メチエの信長面白いのか・・・買ってこよっと(^-^;
Posted by 武藤 臼 at 2007年03月14日 23:42

歴史を好きになる人の中には、ある歴史上の人物のファンであり、そこからのめり込む人が少なからずいますが、自分もやはりその一人であり、その歴史上の人物の中には信長も入っています。やっぱりカッコいいですよ、信長は。
でも、そのキャラクターが好きなため、それに否定的なものはつい敬遠しがちになりますね。そうすると知識も立場も偏りがち。そういう意味で客観的視点を保てる作品というのはやはり重要ですね。
『信長とは何か』はネットで書評を調べてみると、やはり信長ファンには少し気に触る部分もあるようですが、その上でなお面白いと書いている人がいるので、なんかいいですね〜。これもちょっとチェックしてみます〜。

>中国史からの引用がボロボロ
西洋史部分も似たようなものです。

>硫黄
医薬品、ということは漢方薬ですか〜。
琉球王国で硫黄ってとれたんですね。そういうのがあるというイメージは無いですね。珊瑚とかの方がメジャーだろうし。
Posted by 管理人・馬頭 at 2007年03月15日 00:09

>医薬品、ということは漢方薬ですか〜。
ここいらへん、ちょっと具具ってみたら、こんなんありました。
http://www.yakuzenjoho.net/chuyaku/sonota/iou.html

琉球王国の輸出品としての硫黄の話しとかは、吉川弘文館の『アジアのなかの琉球』で触れてました。貴重な輸出品だそうで、産地は沖縄県最北の硫黄鳥島です。
『琉球の風』に出てきたような記憶があるが、気のせいか・・・
Posted by 武藤 臼 at 2007年03月15日 01:41

(シベリア布教とシャーマンの話がありました)
Posted by 蒸しぱん at 2007年03月15日 01:57

>硫黄
痒みが止められたり、お腹の調子がよくなったりと、いろいろありますね。しかし、やっぱり有毒ではあるんですね(笑)
産地が硫黄鳥島とは、名前のまんまでした。台地状の火山島とはカッコイイ。現在は無人島のようです。

>一緒に火の中に飛び込もうと迷惑極まりない勝負を挑まれ
そんな挑戦者は嫌だ〜!
Posted by 管理人・馬頭 at 2007年03月15日 02:31


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参照サイト
PHP研究所
http://www.php.co.jp/
PHP総合研究所
http://research.php.co.jp/
新紀元社
http://www.shinkigensha.co.jp/

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