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紙と砂糖がイスラム世界に与えた影響を紹介。佐藤次高『世界史リブレット17 イスラームの生活と技術』
web拍手レス
>「ロシアとモンゴル」、新宿のジュンク堂で見たことがあります。今はどうだか…。
情報ありがとうございます。
実は別の場所ではあったんですが、ちょうど昨日手に入れることが出来ました。いま、冒頭のところ読んでるところです。なかなか面白そう。

web拍手レス追加
>タラスの会戦、もろ西突厥の領域内なのに全く蚊帳の外なカガンが……(涙)
唐側かアッバース朝側のどちらかに兵士とか提供しなかったんでしょうかね? カルルクは参加してましたが。

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イスラームの生活と技術

『イスラームの生活と技術 世界史リブレット17』

(佐藤次高。山川出版社。1999年。729円。82ページ)
技術・生活・文明
1 イスラームの形成と技術革新
2 知識と技術の伝達
3 食生活の変容
4 黒砂糖から白砂糖へ
5 商品・薬・祭の品として
6 砂糖商人の盛衰

久々に佐藤次高氏の本。『マムルーク』以来か。
イスラム社会において、何らかの技術がどのような発展・普及を遂げたのかをまとめた本で、数多の品の中から紙と砂糖について紹介しています。
前半では紙についてふれています。製紙法が751年のタラス河畔の戦いで中国側からイスラム側へと伝わったというのは、高校世界史レベルの話のようですが、そこからの進展について語っています。紙がそれまでイスラム社会に一般的だったパピルスや羊皮紙に取って代わり、それが社会に大きな影響を与えました。これはパソコンやインターネットが現代の社会に大変革をもたらしたのと同様に、当時の社会における革命的な出来事だったのです。値段や製造の容易さにおいてパピルスや羊皮紙に勝り、多用されるようになり、情報の伝達と蓄積に多大の貢献をもたらしたわけです。
紙は751年以後、八世紀半ばにはサマルカンドで製紙工場が作られました。その後イスラム世界に普及していき、工場は794年にバグダッドで、800年にはエジプトのフスタートで、1100年にはモロッコのフェスで、1187年にはスペインのコルドバで建設され、さらにヨーロッパに伝わり13世紀後半にはイタリアで、14世紀末にはドイツで、建設されることになります。
もともとアラビア語という共通言語を利用し、各地の知的体系を摂取していったイスラム社会は、こうした技術・文化というものが伝わり易く、相互に影響しあって高度な文化を作り上げることができました。それに寄与したのが紙という便利ツールだったわけです。(前にNHKのドキュメンタリーでもやってましたが、紙は羊皮紙と違い、書き換えが出来ないので、公文書の改竄などの不正を防ぐことができたとかいうメリットも)

また後半では砂糖について語っています。イスラム世界に広まっていた砂糖ですが、単に甘味料程度の扱いではなく、もっとイスラム社会の中でなくてはならないような物になっていきます。砂糖は交易商品として輸出までされるくらい重要な物資であり、多額の資金と労働力を必要とし、そのためにカリフやアミール、大商人たちがこぞって経営・投資対象としていたようです。そしてその普及は全イスラム地域に及び、さまざまな地域で砂糖黍栽培が行われたようです(とくに水が大量に必要なため、低地・海岸部などが多かったようです)。さらに、砂糖は贈答の品として用いられ、生活に密着していきます。それに砂糖は薬品としていろいろな効用が知られていました。砂糖が人びとの生活に密接に関わっていくことで、イスラム社会ではやけに甘菓子を出したり、砂糖をお茶に過剰に入れたりするようになったりしたのでしょう。
この砂糖はヨーロッパへも輸出されましたが、これを自前で手に入れようとして新大陸での砂糖のためのプランテーションがはじめられたこと、そしてその砂糖がイギリスの紅茶文化、ヨーロッパの珈琲文化へとつながっていくことは、現代へも通じている砂糖の影響なのだとしています。
紙と砂糖というアイテムを通じて、ダイナミックな世界の歴史的な流れを説明していてなかなか楽しかったです。文書量もサラリと読むにはちょうどいい分量。もし、本格的に読みたいのであれば『砂糖の世界史』などを読むのがいいでしょう。

ところで、この中で、アッバース朝の文人ジャーヒズの言葉の引用があります。
「すべての民族には、それぞれ固有の特徴がある。たとえば中国人は技術に、ギリシア人は哲学と文学に、アラブ人は詩と宗教に、ペルシア人は王権と政治において優れている。そしてトルコ人は戦闘技術に秀で、彼らの関心はもっぱら征服、略奪、狩猟、乗馬におかれている。」
『トルコ人の美徳』というやつからの引用ですが、これみたいにどの民族はどのような民族だ、という大まかなイメージはいつの時代でもあるみたいですね。そういや『マムルーク』でもどの民族がどのような奴隷に適しているか、が書かれていたような。あと「フランス語は愛を語る言葉、スペイン語は神を語る言葉、ポルトガル語は詩を語る言葉」とか言う言葉もあったような。

そうそう、砂糖栽培の話のところで、イスラム社会は農業労働に奴隷は使わない、ということが書いてあって興味深かったですね。ヨーロッパやロシアなどでは奴隷(農奴)は土地とひっくるめて扱われる半ば不動産だけど、イスラム世界では奴隷は動産として見られていたから、そういう扱いなのかもしれない。


その他、ニュースなど。

ラトビア沖で客船座礁 約1000人救助へ(CNN)
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200805050022.html
ドイツのキールからリガへ。豪華観光船のようですね。

「誰も脅すつもりない」=軍事パレード復活でロシア大統領(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2008050500313
パレードひとつでガタガタ言い過ぎ。難癖つけたがりめ。

チェチェンで爆弾事件、警官5人死亡(CNN)
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200805050020.html

NY原油、初の120ドル突破=油井爆破で供給懸念が再燃(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2008050600022

道端に大量の札束が捨てられているのを発見(ギガジン)
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080505_money_bills/
あああ〜、ほ、欲しい! 使えなくてもいいから束で欲しいです!!

ガチガチに凍り付いてしまっているロシアに輸出されている日本車の写真(ギガジン)
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080503_japan_cars/
壊れないのかな・・・

『ロシアとモンゴル』という本が出てるみたいなんですが、どこにも売ってない。アマゾンで頼むと受け取れないから嫌なんですよね〜
あと中公から出てる『世界の歴史』の「近代イスラームの挑戦」が非常に良いとの話を聞いたので、これも買うか。

参照サイト
山川出版社
http://www.yamakawa.co.jp/

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