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  デジタル・クワルナフ
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多数派でない者は枠からはずれ、人の感情を害する。白水社『中世のアウトサイダーたち』
ああ、なんかどんどん暖かくなってきましたね。体調が良くないので、昨日までずっとコート着て外出てましたが、さすがに今日は暑すぎで薄着にしました。

ラサ騒乱10人死亡=警官隊が威嚇発砲、新華社報道−チベット主席、ダライ派非難(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2008031500237
警官隊発砲で7人死亡か=チベット族デモ、四川省に拡大−中国
http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2008031600189
これからどんどん大変になってく。今後、「チベット独立戦争」とかそんな呼ばれかたするような展開には・・・・ならないか。

2年間トイレに座り続けてトイレと一体化した女性、便座ごと病院へ運ばれる(痛いニュース)
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1103331.html
何度読み返しても、状況がよくわかりません。でも、寒い日も暑い日も、ずっとひたすら下半身は裸だったってことだけはわかった。(ぉぃ

それはともかく。
わずかに残った「卑しき人びと」の記録をもとにした本。

中世のアウトサイダーたち

『中世のアウトサイダーたち』

(フランツ・イルジーグラー&アルノルト・ラゾッタ。訳/藤代幸一。白水社。1992年。3200円。348ページ)
第一章・周辺集団とアウトサイダー
第二章・乞食とならず者、浮浪者とのらくら者
第三章・ハンセン病患者
第四章・心と頭を病む人びと
第五章・風呂屋と床屋、医者といかさま医者
第六章・大道芸人と楽士
第七章・魔法使い、占い女、狼男
第八章・ジプシー
第九章・娼婦
第十章・刑吏とその仲間
第十一章・結論でなく、いかがわしい人びととまともな人びと

中世都市ケルンを例にして当時の社会の周辺集団・疎外者・底辺に住む人びとを紹介した一冊。著者はトリーア大学の教授フランツ・イルジーグラー氏と、ミュンスター市にあるウェストファーレン産業博物館のアルノルト・ラゾッタ博士。訳者の藤代幸一氏は、これの他にも、『ある首斬り役人の日記』とか『ハンス・ザックス謝肉祭劇選』『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』『黄金伝説抄』なんかを訳してますね。
社会の基準に達しないもしくは反する行いをする人びとが、いったいどのような扱いを受けたのかがそれぞれの職業ごとに紹介されていますが、中でも娼婦の扱いの酷さは凄いです。社会の底辺といえるそれは抜け出すことさえ不可能な構造を持っています。あと、処刑とか拷問を行う刑吏も興味深い。ある一定の権力・地位を持ってはいるのですが、それと同時に蔑視され忌み嫌われる存在として差別されました。
こうした強烈な差別があったわけですが、一部においては意外と寛容だったりしてそこも面白いです。中世というと非寛容な社会というイメージばかり強いですが、この本に出てくるような社会の底辺にいる人びとを、思ったよりか許容しているところもあります。中でも娯楽に関する商売、楽士や大道芸人、見せ物屋などが、結構普通に商売させてもらったりもしています。どうも、都市の上層部の人たちが娯楽の提供について必要だと認めていたという感じがあります。(もちろん、そうした人たちもこれらの娯楽を楽しんでいます)
その他にもいろいろ興味深い話が満載で、なかなか知られることのない中世都市の下層社会を知ることのできる面白い一冊かと思います。

この本に書いてあったことですが、差別は少ない労力で自己を防衛することの出来る便利な手段であり、非合理的な差別には合理的な効率の良さがある。それは社会構造に取り込まれた合理性なので、ここにかかる「手間」が減らない限り差別は無くならないのでは、とちょっと思ったりもしました。

あと、スラヴ関連の記事はほぼ無いこの本ですが、冒頭にちょっとだけあります。ケルン市がリューベック市に対して出した書き付けのことが書いてあるのですが、そこにはスラヴ人のことがちょっと出てきます。
ある人物の身分証明(嫡子証明書)のための書き付けなんですが、この中で、「メッデメンのヤーコプは婚姻により正式かつ合法的に生まれた者にして、奴隷ではなく自由民であり、ヴェンド人ではなくドイツ人である。」とわざわざ「ヴェンド人(スラブ人)」ではないことを断ってるんですよね。これはどうやらリューベックのようなハンザ同盟の都市では重要だったみたいです。でも、逆にケルン市ではそれほど重要視されない事柄だったということもまた不思議な事情です。つまり、スラヴ人との関わりが密接だったハンザ都市では、その関係性からスラヴ人の地位が低く見られていたということかも。そういえばハンザ都市であるノヴゴロドって、ドイツ人とかの外国人商人を隔離して扱ってたわけですが、そこらへんも対になってるみたいに見えますね。こうなると、ハンザ都市でのスラヴ人の扱いについても知りたくなります。

『中世のアウトサイダーたち』は、2005年に新装版が出てます。ちなみにタイトルが改題されて『中世のアウトサイダー』となってるので注意。

参照サイト
白水社
http://www.hakusuisha.co.jp/

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