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警察官による報復テロとその暗闘の決着をつける時が来た。『ハルビン・カフェ』打海文三
重要な追記。
速水螺旋人さんのブログで知って驚いたのですが、打海文三氏が10月9日に心筋梗塞で亡くなられたそうです。ご冥福をお祈りします。

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web拍手へのレス

>youtubeでigorzeeさbb
>youtubeの投稿者検索で、
>igorzeeさん、UnlimitedQさんを
>みると、戦争と平和がみれます。
>ボンダルチェク監督の。
知ってる人でしょうか? 情報ありがとうございます(100字まで投稿できますよ)。

>ラストの4人は名前を挙げている3人+布施じゃないですかね?? 4人で出て行ったってことだと。
おおっ! なるほど〜! ちょっと読み直してみます。

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3日連続深夜残業のせいで記事が書けませんでした。というか、昨日の深夜は書いてるうちに寝オチした。ふらふらだ。

それはともかく。
前に速水螺旋人さんが褒めてたので知った作品。『裸者と裸者』『愚者と愚者』の作者・打海文三氏が書いた近未来刑事もの(?)。警察暗闘ものとでもいった方がいいか。

『ハルビン・カフェ』打海文三


『ハルビン・カフェ』打海文三

(角川書店。2002年。1800円)
「経済が破綻して混乱した日本。福井県西端の沿岸にある街・海市(かいし)は、難民たちが流れ込み、東京を上回るほどの犯罪多発都市へと変貌した。犯罪組織との戦いで警察官の殉職者が増える中、下級警察官たちの秘密組織『P』が報復テロを始める。その暗く熱い戦いが通り過ぎて十数年が経った時、新宿で銃撃事件が起きPの元幹部が殺害される。それはそれぞれが持つ海市での過去の清算のはじまりとなるのだった・・・」

ロシア系、朝鮮系のマフィアが勢力を持つ海市(かいし。蜃気楼の意)という街で、もっとも危険にさらされる下級警察官たちの中で、マフィアたちに対する報復テロが巻き起こり、それを危険視した公安を巻き込み、三つどもえの戦いが燃え上がった後の話。
はじめは、幼い女の子がひどい目にあって怯みましたが、途中から警察内部の暗闘とかになると、ぐんぐん引き込まれました。半分くらい読んだ時点でいろいろ明かされてきて、「もう謎説き終わりか」とか思ったんですが、どうやら自分がこの物語の中心部分を間違えてて、基本的な「読み方」に問題があったことに気付いたりしたけど。後半はしっかり読みどころを摑んでガーっと一気に読み込ませます。
ともかく、人間関係が入り組んでて、過去の出来事とそれぞれの事件が絡み合い、そう繋がるのか、と何度も思ったりしました。ただ、ちょっと複雑過ぎて分かり難いところもありましたが。それでも大変楽しく読むことができました。特にどの人物も魅力的で、そのキャラクターだけでも楽しめる。
私のお気に入りはやはり小川未鴎(おがわみおう)よりも、監察官の水門愛子(みとあいこ)でしたね。昴は早く死んで欲しかったですが、結局最後まで生き残ってしまいました。小久保仁は途中までは死ぬかと思ってたら、実はこの物語の二人の主人公のひとりだった。あと、朝鮮系マフィア十星会の李安国はちょっとしか出てこないけど、非常に語りが面白い人物でしたね。あと、ト・トイも気に入ってる。

問題点としては、作中で登場人物たちをああも魅了した布施の全能感が、私をあまり魅了しなかった、むしろ不快感すらあったことかな。これは単にキャラの好き嫌いの問題か。
あと、あれだけ冒頭から出ばってた石川ルカが、海市に戻って来て果たした役割があれだけだったのはもったいなかったかも。竹原なんとかって女の印象も薄いので対比できないし、どうすればいいんだ。

そういや、最後に布施を南アで襲撃した四人組って、昴と水門と小久保までは分かるけど、あとひとりって誰だろ? そこはよく分かんなかった。

ちなみに、作中でスリコフの『大貴族婦人モロゾワ』(原題は「フェオドーシヤ・モロゾワ」)のことに言及してるシーンがありますが、これは17世紀半ばの宗教改革(ニコンの改革)の時代にシベリア流刑にさせられた女性を描いたもので、絵の右下にいる座り込んだ乞食のような男性は、佯狂僧(瘋癲行者)。彼が(そして婦人が)している二本の指の形は、古儀式派(分離派、旧教徒)で儀礼で十字を切る時の手の形です(ここらへんの歴史的背景については、『世界歴史大系 ロシア史1』のP426から438あたりまでを読むとわかります)。本文中でルカが「ここには狂人が狂人を装うかのような倒錯があると思った。無能で無用で、生まれつき徹底的に卑しく、不治の病に冒されて異臭を放ち、喜捨をもとめてさ迷い歩く人物として描かれているらしいこの男は、宗教的なレトリックのなかで、この世ならぬ霊的な存在へ奇跡的な転換をとげる。」(P298より抜粋。)と、この絵画の背景を知らないまま、その本質を見抜いたのは凄い。打海氏はここで上手くこの絵に言及させたくらいだし、当然この絵の意味を理解しての表現でしょう。
この作者は作品を読んで思いますが、どうもキリスト教(もしくは宗教)に対する屈折した感情を持っているようですね(キリスト教徒の家や学校だったとか?)。なんだか、おがきちか氏の漫画に似た、欺瞞や、「本人の理解してない傲慢さ(?)」に対する嫌悪を感じる。
この絵画のレプリカがあった作中の教会は「聖セラフィム教会」でしたが、聖セラフィムについては『ロシア正教会と聖セラフィム』という本があります。うちでも記事にしました。ロシアマフィア関連なだけにロシア正教系なわけですね。

ところで、打海文三の公式サイトがあるとはじめて知った。そこで知ったのですが、12月に『裸者と裸者』が文庫化されるとか。帝国少年氏のイラストで新装丁の本出したけど、あれが捌けたってことか? 文庫の方も帝国少年氏の表紙になりそうな気が。『愚者と愚者』は出てから一年くらい経つけど続きはやく出してくんないかな〜


参照サイト
パンプキンガールズは二度死ぬ(打海文三公式)
http://higasinaganuma.cocolog-nifty.com/blog/
愚者と愚者 角川書店公式
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200609-03/
帝国少年
http://tksn.web.infoseek.co.jp/
ワシーリー・スリコフ(wiki日本語)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%8
3%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%95
Суриков, Василий Иванович(wikiロシア語)
http://ru.wikipedia.org/wiki/Суриков%2C_Василий_Иванович
空飛ぶ速水螺旋人
http://park5.wakwak.com/~rasen/

関連記事
内戦の混乱の中で生きる少年と少女たちの生きるための戦いについて。『裸者と裸者』上下巻、という記事
http://xwablog.exblog.jp/7533952
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重要でない追記。
この書名を『ハルビン・カフェ』ではなく、『ハルピン・カフェ』としている人が何人かいるのをネットでみつけた。地名としてはどっちもありですが、書名は『ハルビンカフェ』で濁る。
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by xwablog | 2007-10-06 00:56 | 日記
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