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首都圏を巡る混沌とした戦いの中で十万人の女の子と十万丁のAKを夢想しろ!『愚者と愚者』上下巻。の記事
これも古い記事。
『ハルビンカフェ』読み終わったついでに新ブログに移してみました。

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2006年11月06日
首都圏を巡る混沌とした戦いの中で十万人の女の子と十万丁のAKを夢想しろ!『愚者と愚者』上下巻。

「決断を重ねつつ、欲望のもつれを丹念に解きほぐしていくのが、我々の戦争なのさ」

前の『裸者と裸者』では月田姉妹の内、桜子らしき方がテロで殺害されるところで話が終わってますが、話はそのまま続きます。なんか、『裸者と裸者』がすんなり終わったので、この話はあれで終わりなのかと思ってたのですが、そうじゃなかったわけです。実はこの前の神田神保町の古本祭りで見つけるまで、続刊が出てたとは知らずにいました。

愚者と愚者 上巻


『愚者と愚者』上巻「野蛮な飢えた神々の叛乱」

(打海文三。装丁画・帝国少年。角川書店。2006年。1500円)
「桜子を殺したテロ組織『我らの祖国』。その人種的・性的に偏狭な思想は拡大を見せ、強力な勢力として首都圏を混乱に陥れる。さらに信州軍の支配地域からゲイを支持しながら女性に対して偏狭な『黒い旅団』が登場し、首都圏を目指す。外国人を含めた各勢力とともに民主的選挙を実施しようとする首都圏を握る旧政府軍や常陸軍などによる同盟軍は、その緩い連合体の隙を突かれることになり、混乱は危機的状況を生みだすが、常陸軍は白川の指導の下、徹底した戦いに挑もうとする。しかし、海人の所属する孤児部隊では選挙実施に向けた対立の中で動揺する者もいて・・・」

首都圏での勢力争いがさらに激化。勢力拡大の展開や衰退が凄い早く、くるくると事態が移り変わります。
「我らが祖国」によるテロ活動は、外国人・性的マイノリティを含む人々をまとめて選挙に参加させる方針に動揺を与え、仲間ともいえた人々を対立させます。特に虹の旗のロレッタ派が強行に抵抗し、パンプキンガールズや孤児部隊とさえ戦闘になったりします。事態はこれだけこんがらがっていくというのに、それでも落ち着くべきところに落ち着くというのが凄いですね。まさに冒頭の言葉の通りです。
しかし、なんとか選挙を行うことができたものの、その過程で孤児部隊の最古参である俊哉が暴走。責任を取らせて常陸に送られます。そして黒い旅団の首都圏進出に合わせて、その俊哉が叛乱を起こし、常陸軍を危険な状況に追い込みます。かつての仲間を倒すため、海人は部隊を船で常陸まで向かわせることに。
こうした話の別の側面として、性的なアイデンティティの揺らぐ中での戦いというものが浮き出てきます。これはさらに下巻におけるトランスジェンダーたちの重要な役割が、さらに強調することになります。


「椿子がおんなじようなこと言ってたよ。欲望がどこへ向かうかなんて、本人にもわからない」


愚者と愚者 下巻


『愚者と愚者』下巻「ジェンダー・ファッカー・シスターズ」

(打海文三。装丁画・帝国少年。角川書店。2006年。1500円)
「俊哉の離反を常陸で撃破した海人。しかし常陸軍は多摩と常陸に分断され、さらに名古屋・東海地域から連合して進軍してきた新勢力・社会正義党が旧政府軍を吸収して首都圏の大部分を握ることに。そんな中、月田椿子が率いるパンプキンガールズは『我らの祖国』と黒い旅団によって徐々に追いつめられていく。しかし、各勢力が入り乱れる中、少女たちは逆襲をしはじめる・・・」

椿子たちの存在をまったく認めない「我らの祖国」と「黒い旅団」。どちらも「モーセ=2月運動」系の思想の影響を受けているようですが、我らの祖国は東京UFと繋がって資金潤沢な大勢力に、黒い旅団は信州の孤児部隊出身の河野に率いられたゲイによる「真実の愛」の信奉者。どちらも女性嫌悪で連携しているということで、パンプキン・ガールズは窮地に立たされますが、女の子たちは果敢に抵抗していきます。我らの祖国に対するテロ作戦を行う時、あの死体屋ちゃんが再登場して活躍します。でもずっと「死体屋」って呼ばれてて名前出てきません。さらに椿子はいつまでたっても前線にでちゃうのでまた銃撃戦ですよ。

「出たとこ勝負だ!」

格好良すぎだ!
相変わらずの無茶っぷり。まさに「秩序破壊を夢見る不良少女がいっぱい」です。
でも、『愚者と愚者』は前の『裸者と裸者』とに比べさらに性的な思想の対立が顕著です。保守的思想と先進的な思想が、反発し内包し矛盾しながらも許容し、否定しながら実行されるあらゆる性。男嫌い、女嫌い、ゲイ、レズ、性転換者、あらゆる種類の売春婦とあらゆる種類の男娼といった人々が登場し、まさにごちゃまぜです。こうした思想的闘争に対するは、パンプキンガールズの「無秩序」といった感じで、その読み解きと戦いが凄く面白くなってます。

この下巻で、はじめは我らの祖国をやっつけるのかと思ったら、黒い旅団の方が先でしたね。ドラッグによる組織の破壊と各組織との連携。そこに常陸軍の進軍とパンプキンガールズによる黒い旅団の最重要幹部の拉致があって、ほぼ勝敗が決します。
後は社会正義党をクーデターで破壊・吸収した「我らが祖国」との対決という形が出てきました。これについては続刊になるのだと思います。ホント、このシリーズは続くとは思ってなかったので、さらに続いてくれそうな感じなのは嬉しい限り。
楽しみですね。でも、次出るのってまた2年後とか?

あと、タイトルも次はどうなるのか。シリーズ名みたいのが無いのでまた『●●と●●』みたいになるかも。これの元ネタはノーマン・メイラーの『裸者と死者』らしいから、次の巻が最終巻だとしたら『死者と死者』かもしれない。


イラストが前の影山徹氏から、底なしの世界観で知られる帝国少年氏へと変わっています。
この前手に入れたチラシを見ると、『裸者と裸者』の紹介する部分で影山徹氏のイラストではなく、帝国少年氏のイラストを使ってます。公式を見ると、やはり新装丁ということになるらしく、まだ買えないみたいですが、現在の在庫が出たらたぶん新装版が出ますね。
ところで、興味深いのは、このチラシが、この前買った『円環少女』第4巻(これも角川書店)に挟まっていたこと。スニーカー文庫のラノベ読者層にこの小説が受けるという目論見があるのかと思われますが、たぶんかなり適正な判断じゃないかと。たぶん『裸者』も『愚者』もライトノベルの範疇かと言われれば、そうではないと言われるかと思いますが、それでも読者層はかなりかぶるのではないでしょうか。チラシに方にも「ハイブリッド・ジュブナイル小説」って書いてありますし(笑)。
あまり評判になってないみたいだけど、これはもっと知られていい小説だと思います。

先日、ジュンク堂に行った時に『書店繁盛記』という本があったので手にとって見て見たのですが、その中で「Amazonなどによる、1500円以上で送料無料、というサービスの影響で、最近の本の値段設定が、1500円を上回るようにしてあるものが増えた」とあって、ああ確かにそうかもしれないな〜、とか思ってたんですが、この『愚者と愚者』も前の『裸者と裸者』も、みんな各1500円でした。うーむ、こういうことかな?


参照サイト
パンプキンガールズは二度死ぬ(打海文三公式)
http://higasinaganuma.cocolog-nifty.com/blog/
愚者と愚者(角川書店公式)
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200609-03/
帝国少年
http://tksn.web.infoseek.co.jp/
パノラマ世界塔(影山徹公式)
http://www.tetsu9s.net/

Posted by 管理人・馬頭 at 04:46 |Comments(3) |TrackBack(0) | 本<小説> , 本<ライトノベル> , 軍事

この記事へのコメント

知らんかった。早く貸して〜!!
Posted by モーリー at 2006年11月06日 23:48

フフフフフ。すっごいイイぞ〜。
Posted by 管理人・馬頭 at 2006年11月07日 06:23

新装版の『裸者と裸者』はやはり帝国少年氏が描いたイラストの表紙になってました。すでにこのバージョンで買えるようです。
Posted by 管理人・馬頭 at 2007年01月17日 06:32

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作者の公式サイトがあったので、参照サイトに追加しておきました。

関連記事
内戦の混乱の中で生きる少年と少女たちの生きるための戦いについて。『裸者と裸者』上下巻、という記事
http://xwablog.exblog.jp/7533952
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by xwablog | 2006-11-04 00:32 | 日記
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