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ホロの故郷ヨイツの情報を求め修道院を探すのだが。支倉凍砂『狼と香辛料』第4巻の感想
これも古い記事。

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2007年02月11日
ホロの故郷ヨイツの情報を求め修道院を探すのだが。支倉凍砂『狼と香辛料』第4巻

昨日は思うところあって、カレーに大量の大根おろしをつけて食べました。味はあえて言うと悪くは無い。少し水っぽいのが問題かも。よく水気を切ってからがいいでしょう。

それはともかく。
『狼と香辛料』の第4巻の感想。『狼と香辛料 IV』とした方がいいのかな? 各巻タイトルをつけて欲しいとかちょっと思った。

狼と香辛料第4巻支倉凍砂

『狼と香辛料』第4巻(IV)

(支倉凍砂。イラスト/文倉十。メディアワークス。電撃文庫。2007年。610円。装丁/荻窪裕司)
「クメルスンの街でディアナから聞いた話から、古い神々の話について詳しいという修道士を訪ね、田舎街テレオにやってきたホロとロレンスの二人。しかし、修道士がいるという修道院への道を誰も教えてくれず、困ることに。それにはこのテレオと、近くの街エンベルクとの関係が、緊張した状態にあるためだったのだ。この均衡が壊れることになるものを、テレオの教会を守ろうとする少女エルサ・シュティングハイムが隠していたりもするのだが・・・」


狼神ホロの食い倒れ旅情。
最近、ホロが喰いまくりです。もうロレンスもホロの可愛さの前には財布の紐も緩みがち。
そんな二人の故郷探しの旅は、徐々にヨイツに近付いていきます。街というか村みたいなテレオは、昔から異教の蛇神トルエオを崇拝していた土地。教会があるのは外圧との妥協の産物で、ということらしい。そのため半ばはれ物扱いの教会だったのですが、かつてこの教会の司祭だったフランツがなかなかの傑物で、テレオの利益となるような契約をエンベルクの街と結んでくれたため、村はかなり余裕のある生活をしています。
このフランツ司祭がディーエンドラン修道院のことを知っていたのですが、彼は夏に死んでいて、ホロたちは情報源を失います。フランツの死はテレオとエンベルクの関係にも影響し、エンベルクはテレオ有利な契約を破棄するため、罠をしかけてきました。その罠に使われたのがロレンスたちでした。テレオから売られた麦が、人体に悪い影響を与える品だとして、麦の払い戻しを迫られるテレオの住民たち。多額の返金に応じられず、契約の悪い状態での更新さえ迫られかねない状況の中、罠にはまったロレンスたちにも敵意が向けられます。さらには異教崇拝の排除を狙う教会勢力や、間に立たされて苦悩するテレオの女司祭エルサ。エルサと仲のよい粉ひきの青年エヴァン。そうした人々の思いが錯綜する中で、ホロたちはこの教会こそが件の修道院そのもののことだと知ってフランツ司祭(=ルイズ・ラーナ・シュティングヒルト修道院長)が残した大量の書物を見ることになります。熊神によって滅ぼされたヨイツの話の経緯についてなどを知り、さらにヨイツへの手がかりを掴みます。

しかし、この巻を読んで思ったのですが、

ロレンス、ハメられ過ぎ。

またか! とか思いました。ロレンスの商売相手はみんな詐欺師か。
テレオに行く前の村で取り引きしようとしたリーンドットという商人によって、テレオに対するエンベルクの策略の駒にされてしまったロレンス。この話では、蛇神の異教信仰と教会の正教が対立のベースになってるのですが、最後は妥協点を見つけるというか、名目的な同化を行うというか、そんな感じの結末になってます。この世界での教会の宗教団体としての実体や、異教信仰そのものの形態がいまいち分からないので、互いの対立点そのものが曖昧だったような気がします。そのため、ロレンスとホロは、エルサとエヴァンをテレオから逃がす、という行動をとっても、いまいちしっくりきませんでした。

「だが、お前は、故郷に帰ったらその先、どうするんだ?」

より重要だったのが、教会で見つけることになるフランツ司祭の蔵書ですね。昔話を集めた本の中から、ヨイツの情報を手に入れるホロ。傷心と安堵がホロにもたらされますが、そんな中でのロレンスとの会話が絶品でした。
故郷がもう無いことは分かってはいるものの、じゃあ、どうするのか、ということを決めかねるホロ。そして、それが別れとなるのではという予感に寂しさを感じている二人。
結末としては前巻のあの話が示した方向性なのかもしれませんが、そう簡単にはいかないでしょう。
単純に考えたら、次の街レノスで1話、そしてヨイツにたどり着くまでに1話で、2話くらいあれば終わりそうな流れですが、なんか、エピローグ見たら、どうも問題を先送りする感じになりそうですね。しかも、二人ともが望んで!
ああ、そうか! そんなにイチャつきたいんだな!

この話では、パン作りの話が少しネタに絡んできてます。
中世のパン屋がどんなもんだったのかについては、これが詳しい。


中世のパン

『中世のパン』

(フランソワーズ・デポルト。見崎恵子/訳。白水社。1992年。2300円。230ページ)
第1章・麦畑から粉挽き場へ
第2章・パンづくり
第3章・パン屋の共同体と同職組合
第4章・フランス、パン巡り
第5章・パンの販売場所
第6章・なくてはならない市外からのパン
第7章・自家製パン
第8章・パンの価格、原則と実際
第9章・都市のなかのパン屋
第10章・パン消費の数量的評価の困難
結論


中世フランスでのパン作りの歴史的状況を紹介する一冊。
パンの時代ごとの流行り、作り方や販売方法、価格に量、国の関わり方、パン屋の仕事内容まで、いろいろ知ることができます。
『狼と香辛料』の第4巻で話題にもなってた、水車小屋の粉挽きへの差別意識とか、そこらへんについても書いてあります。

「農村でも、どんな小さい村であろうと、自分たちの水車を持っていた。これは領主によって建てられたものであり、多くの場合領主の罰令権によってこの水車小屋の使用が住民に強制されていた。」(『中世のパン』P18より抜粋。)

こうして建てられた水車小屋に取り付けられた石臼で、麦は挽かれて粉になるわけです。使用が強制だったため、これは一種の税金として考えられていました。「水車税」と呼ばれています。
この水車小屋で働く粉挽きの立場はかなり微妙でした。

「さて、粉挽き場の所有者は、自分で直接経営にあたることはせず、専門家たる粉挽き人に管理・運営を委ねた。その際、粉挽き人が果たすべき責務が、様々な条項に定められた。粉挽き人が単なる使用人の立場におかれることもあった。つまり、粉挽き場の利用者が支払った使用料を全部そのまま主人に渡し、その代わり、現物ないし貨幣で報酬を受け取るような場合である。しかし、13世紀以降は、契約によって一定期間粉挽き場の営業を任された小作人的立場にたつ粉挽き人が多くなった。粉挽き人は、定められた諸義務を果たす代わりに、客が支払った使用料を自分のものにすることができるようになったのである。」(『中世のパン』P29より抜粋。)

こうして使用料を取るわけですが、支払いは古い時代では現物で行い、だいたい持ってきた麦の量の12分の1から24分の1の間くらいで決まっていたようです。14世紀以降は徐々に貨幣での支払いも行われるようになりますが、これは近代になってもなかなか普及しなかったようです。

「嘘つきで怠け者の粉挽き人、怒りっぽくいかがわしい粉挽き人に対する客たちの苦情は、訴訟記録に満載されているし、他方で、重労働にもかかわらず実入りの少ないことを嘆くこの嫌われ者の粉挽き人たちの陳情書も数多くある。」(『中世のパン』P35より抜粋。)

麦を持ってくる人は、麦の保存が穀粒のままの方がいいので、少しずつ粉にしていきました。そのため、人々は頻繁に粉挽き場を訪れるため、そこが一種の社交場、集会場にもなったりしました。しかし、そういう面がある反面、地形的条件から村の中心とは離れた場所にある場合など、半ば孤立した存在として扱われることもあったとか。それは村はずれに住む老婆が「魔女」扱いされるパターンと同様に、集団の外側の人間として差別を受けることに。これに関しては『中世のパン』じゃなく、他の本に書いてあったような気がしたんですが、何の本だったかな?


参照サイト
すぱイしーているず(支倉凍砂公式)
http://ameblo.jp/hasekura2/
ハイノハナ(文倉十公式)
http://haino.mods.jp/
電撃文庫&hp
http://www.mediaworks.co.jp/users_s/d_hp/index.php
META+MANIERA(メタ+マニエラ)
http://www.meta-maniera.com/


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by xwablog | 2007-02-11 01:53 | 史劇
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