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他の商人から一目惚れされるホロ。ロレンスとの勝負は取り引きで。支倉凍砂『狼と香辛料』第3巻の感想
古い記事。
『狼と香辛料』の三巻目

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2007年02月10日
若き商人から一目惚れされるホロ。ロレンスとの勝負は取り引きによって。支倉凍砂『狼と香辛料』第3巻

転職するぅぅぅー、っと昨日の夜中に唐突に思い立って、いろいろ調べたのですが、どうにももうダメなんじゃないかとヒシヒシと感じている馬頭です。
いや、技能面での問題が最大なんですが、なにより年齢的にたぶん面接受けてくれない感じです。
あの、お願いですから、採用情報に「●●歳くらいまで」って書くのはやめてください。「くらい」ってなんだよ。期待だけさせるつもりかぁ!

それはともかく。
中世風経済ファンタジーとも言われる『狼と香辛料』の3冊目の感想。

狼と香辛料第3巻_支倉凍砂

『狼と香辛料』第3巻

(支倉凍砂。イラスト/文倉十。メディアワークス。2006年。590円。装丁/荻窪裕司)
「旅の道連れとなった狼神ホロの故郷を探して北へ北へと行くロレンス。リュビンハイゲンでの危機を脱した後、彼らは祭りで賑わうクメルスンへと着く。商館の仲間たちにホロとの仲を囃されていたのもつかの間、今度はその二人の仲のせいで厄介な騒動が持ち上がる。知り合った魚商人のアマーティが、ホロに一目惚れして『無理矢理連れ回されているホロを助けるため』に取引きを持ちかけてきたのだった。分のいい賭けだと乗ったロレンスだが、話は妙な方向へと向かいそうで・・・」


ホロかわいいよホロ、で知られる『狼と香辛料』の第3巻。
岡愡れ青年のお話がメインなんですが、今回も商取引がネタとなっています。魚商人フェルミ・アマーティはロレンスとホロと知り合い、ホロに惚れてしまいます。彼は若くあってもなかなかの商売人。結構お金も持ってます。そんな彼は、借金のため無理矢理ロレンスと同行しているというホロの言い逃れを真に受け、ロレンスにお金を払うから彼女を自由にしてやってくれ、と言われます。それで持ちかけられた取り引きというのが、いついつまでに幾ら支払うならホロは自由、といったようなもの。ロレンスは、どうせそんなお金は集められないし、何よりホロがアマーティにどうこう、といったことも無い、と高をくくっていたのですが、クメルスンの年代記作家で女錬金術師のディアン・ルーベンスのところで教えてもらったホロの故郷の情報を、ホロが見てしまい、そこらへんから二人の関係が拗れてしまいます。
にわかにクメルスンの町中で流行しだした黄鉄鉱。それによって高騰する価格と、それに投資する人々。その黄鉄鉱売買によって利を得ようとするアマーティとロレンス。そしてそれは取り引きによって相手を打ち負かそうという戦いになっていくのです。相場の上下によって儲けを出すやり方や、その相場そのものの操作など、なかなか面白いネタが組み込まれています。
しかし、さらにこの巻では、ホロとロレンスがいい雰囲気出しつつも、途中から咬み合わないでギスギスして、最後でもうめちゃくちゃいろいろ互いに知られてしまって、もうニヤニヤものですよ。「夫婦喧嘩は犬も喰わない」の通り。アマーティもいい迷惑でしたとさ。

ちなみに、話の中でロレンスは「ローエン商業組合」という組織に参加していますが、これ、会社ではなく、いわゆる「商人ギルド」と呼ばれる商人組合ですね。これについては、『西欧中世史事典』を読むと少し理解しやすいです。


西欧中世史事典

『西欧中世史事典 国制と社会組織』

(ハンス・K・シュルツェ。ミネルヴァ書房。MINERVA 西洋史ライブラリー22。1997年。3800円)


これの中では「ギルド=商人組合」「ツンフト=同職組合」という感じで分けてありますが、今的には「商人ギルド」と「同職ギルド」とした方がいいかもしれません。

「中世初期に商業旅行中商人に与えられた支配者の保護は、その効果の程度が低かったので、仲間団体の形成が促された。商人は、商業旅行中に遍歴商人仲間(ギルド)に集結した。(中略)商人定住区や市場が成立するにともない、商人はより緊密に結合し、遍歴商人仲間からギルドとハンザという恒久的団体が生まれた」(『西欧中世史事典』P286より抜粋。)

同じ職業の仲間による相互扶助団体、とでもいえばいいでしょうか。そういう事をするメリットは大きく、徐々にそうした利権を独占しようとしていくようになります。

「ギルドとハンザは権利能力を有する団体であり、それゆえ特許状をうけとり、契約を結び、印璽をもち、寄進をなし、土地や用益権などの資産を獲得することができた。ギルド会館や織物倉庫・販売所は、商業都市ではたいてい代表的な建物のひとつである」(『西欧中世史事典』P288より抜粋。)

ロレンスが各地で立ち寄る会館はこういったものでしょう。
だけど、この話の中に出てくる「商業組合」はやはり実際のギルドなどとはちょっと違う感じがしますね。このローエン商業組合は、組織としての相互の繋がり、意味合いが希薄な感じがします。ラトペアロン商会とかミローネ商会とかは、まさしく現代の会社組織に近いイメージですが、このローエンはどう表現すべきかな。

こうした組織は実際には地域的地縁的な繋がりがあったりして、非常に排他的になるものですが、よくあるファンタジー世界ではそういったものがあまり無く、誰もがかなり自由にやれてます。ギルドなどの組織がその統制力を失うのは、国家の組織的な成長とその統制力の強化が、より大きな枠でそうしたものを排除するからなのだと思いますが、そうした国家権力の存在はあまり感じられないので、他のその話ごとの世界観的理由があるのでしょう。それはそれでどういう経緯があって、と考えると興味深いものです。

ところで、この話の設定に中世ヨーロッパの社会状況を照らし合わせてみたりして楽しんでましたが、よく考えれば1巻冒頭で時代の変化について書いて中世的ではない時代の到来を表現してましたし、自分も中世というより近現代的とも書いた通り。そういうのを当てはめるのはともかく、この『狼と香辛料』の世界での社会が、現実世界と同様の「バランス」で成り立っているようでは無いです。となれば、そのバランスの違いから社会構造の違いも出てくることでしょうし、ある面では遅れてて、ある面では進歩的な状況もありえるでしょう。やはり、つい歴史おたく的観点が、ファンタジーを見る目に影響してしまって、どうも突っ込みが多くなってしまうのは、多少なり気をつけたいところ。

話変わりますが、この話のカギを提示する人物である女錬金術師ディアン(ディアナ)・ルーベンスですが、彼女が実はホロと同じく古い動物神(鳥型)のひとりだったという部分で、どんな鳥か、ということについては出てきませんでしたが、鳥になった状態での登場シーンが見たかったですね。


そういや、画像の質を落とすというのは、ツーランクだとかなりガサガサなのでワンランク下げるだけにしました。それでも今までの半分近い減量。こんなことなら画像サイズをちょっと上げてみるかな?

あと、今日(2月9日)はなぜか夜にDIONのプロバイダが「混雑」で繋がらない状態が続きましたね。なんだろう? というか本当に混雑なのかな。

4巻の記事はこちらへ


参照サイト
すぱイしーているず(支倉凍砂公式)
http://ameblo.jp/hasekura2/
ハイノハナ(文倉十公式)
http://haino.mods.jp/
電撃文庫&hp
http://www.mediaworks.co.jp/users_s/d_hp/index.php


この記事へのコメント

蒸しパンさんがこの2人をバカップル呼ばわり。
あと瑕疵のこと。

私のコメント

>バカップル!
そうなんですよ。もう、しょうがないくらいのバカップル振りで!
ニヤニヤニヤニヤしっぱなしですよ。

>瑕疵
作者のブログにあった、これのこと?

>作中の記述には矛盾というか、そういったものがあります。
>具体的には326Pです。
>「あれ?」と思われた方、たくさんいらっしゃると思います。

ちなみに私の持っているのは四版です。たった三ヶ月で四刷りされてるというから凄い。
Posted by 管理人・馬頭 at 2007年03月19日 06:14

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by xwablog | 2007-02-10 01:51 | 史劇
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