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ヨーロッパ知的世界の連続性を見逃すな! ハスキンズ『12世紀ルネサンス』
今度の週末は実家に帰る予定。微妙に近くて面倒極まりない。

それはともかく。
歴史の本は読んではいても、全然レビューとか書けなかったので、ちょっとずつでもやってきます。

十二世紀ルネサンス


『12世紀ルネサンス』

(チャールズ・ホーマー・ハスキンズ。訳/別宮貞徳&朝倉文市。みすず書房。1989年。3296円。本文印刷/理想社印刷所。扉表紙カバー印刷/栗田印刷。製本/鈴木製本所)
第1章 歴史的背景
第2章 知的中心地
第3章 書物と書庫
第4章 ラテン語古典の復活
第5章 ラテン語
第6章 ラテン語の詩
第7章 法学の復活
第8章 歴史の著述
第9章 ギリシア語・アラビア語からの翻訳
第10章 科学の復興
第11章 哲学の復興
第12章 大学の起源
原注
解説
あとがき
文献書誌
索引

アメリカの中世ヨーロッパ史家のハスキンズが1927年に書いた本の翻訳。
「ルネサンス」というと、13世紀〜15世紀のイタリアの話、という感じですが、それに似た、知的な変革の転換点が12世紀にあったんですよ、ということを紹介した本、といえばいいのかな。何か決定的な何か、というようなものがあったというより、12世紀を全体的に眺めると、ここらへんが準備段階で後々の発展の端緒があったのだな〜、ということが分かって来る。そしてそれは、暗黒時代の中世と、近世の間にルネサンスがポンっと突然現れたのではなく、こうした時代があってこその、連続性を持ったものとして見れます。

興味深かったのは、当時のヨーロッパにおいて、ギリシャ・ローマの古典作品の貧相さが予想以上だったこと。徐々に増えていくもののラテン語のキリスト教関係が多く、ギリシア系の古典はあまり無かったとか。さらに、ヨーロッパの知識人層の中でもギリシア語が読める人がそうそういなかったとか。稀にギリシア語の写本があっても、まともに読めなかったり。
また、そうした古典や学問の伝達が、何にましてもシチリア王国、そしてイベリア半島経由から、というのが圧倒的だったようです。学問的中心地というものも、修道院から司教座聖堂、そして大学への変遷もみられます。
これらの知的中心地というものが、どれだけ人を引き付けるのかというのも見れて面白い。

あと、個人的に非常に楽しめた部分として、第8章の「歴史の著述」のところで、歴史書を、まさに歴史書として書き出すようになったのもここらへんの時代からということ。もちろん古典時代はありましたが、それ以来ずっと廃れてた分野だったわけです。なにせ、タキトゥスでさえも事実上知られていなかった時代ですから。

「キリスト教ヨーロッパは、はるかに近代にいたるまで、歴史哲学をアウグスティヌスから、年代の体系をエウセビオスから取っており、この二つが結合して中世の年代記、つまり一般的な世界史になった。」(P191より抜粋。)

まあ、キリスト教世界として、その世界観そのものがキリスト教的な流れを持った歴史を書かせることになるわけです。

そういえば、これを読んでた時は同人誌作ってる真っ最中で、まったく関連づけて考えていなかったけど、『原初年代記』も12世紀に作られたものでした。この本の中でもちょっとだけそれに触れられていました。

「その間、独立を保っていたスラヴ人は自分たちの歴史を作り出していて、中でももっとも目につくのは、ボヘミア人の歴史の父といわれるプラハのコスマスである。同じくハンガリーも12世紀に国王聖者イシュトヴァンの伝記をはじめてつくり、また、ロシアでは通称ネストルが歴史記述を発足させた。」(P224より抜粋。)

まあ、この東欧・ロシアにおける歴史著述の動きが、12世紀西欧における歴史著述の一部で、その動きと連動していると単純に見るのはたぶん違うと思うけど、ポーランドの『ガル年代記』も含め、11世紀末から12世紀あたりの東欧の歴史書の発展は少し考えるべき流れと思って忘れないでおきたい。

しかし、この本すっげー面白かったです。有名な本でしたが、日本語に訳されたのは60年近く経ってから。それでも楽しめました。

ハスキンズという人は16歳くらいで大学卒業しちゃうような人で、ヨーロッパ留学後、母校のジョンズ・ホプキンズ大学で講師になったのが20歳くらいとか!(なにそれ)


参照サイト
みすず書房
http://www.msz.co.jp/
12世紀ルネサンス(wiki)

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by xwablog | 2007-08-07 02:56 | 書庫
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