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当時の社会状況を確認しつつ信長の実態とその意義を問う。小島道裕『信長とは何か』講談社選書メチエ356
当時の社会状況を確認しつつ信長の実態とその意義を問う。小島道裕『信長とは何か』講談社選書メチエ356

20070329

漢字で「羊」という部首が使われている字について、その歴史とかを書いてあった本を1か月近く探してるんですが、まだみつからない。新書だったと思うのですが、選書だったかな? 『部首のはなし』がそれっぽいけど、本屋には置いてないから古本屋か図書館でチェックしてみるか・・・。

それはともかく。
この前、奥野さんがお勧めといっていた『信長とは何か』を読んでみました。はからずも同時に、武藤さんもブログで書評を書かれてます。

信長とは何か_小島道裕

『信長とは何か』

(小島道裕。講談社。講談社選書メチエ。2006年。1500円。238ページ)

第1章・「大うつけ」--若き日の信長
第2章・桶狭間
第3章・天下布武
第4章・岐阜城の信長
第5章・岐阜城下と楽市令
第6章・上洛
第7章・信長の敵---戦国時代とは何か
第8章・合戦と講和
第9章・公家になった信長
第10章・安土城下町1 城と家臣
第11章・安土城下町2 町と楽市令
第12章・本能寺の変 信長を殺したもの

信長についての本ですが、人物伝というよりは信長の方法論についての本。武藤さんがうまく説明してるので、細かい部分をネタにしてみます。

この本を書いた小島道裕氏は、現在、国立歴史民俗博物館助教授で、中近世の日本史、それも城下町の研究の専門家だとか。著作に『戦国・織豊期の都市と地域』や『城と城下 近江戦国誌』というのがあるそうです。だから、城下町についての記述が結構あります。そういった視点からの状況理解や信長の評価が新鮮で楽しめます。また、文体が結構淡々としてて、信長に対して冷静な分析をしているようにも見えます。いままでにありがちな信長マンセー的伝記などとは違う、いい意味での信長本かと思います。

この中でいくつか面白かった話といえば・・・

桶狭間の戦いの勝利についての近代日本への影響について書かれたところで、
「これも藤本氏が指摘するところだが、明治以降の日本の軍部は、数において劣る信長が勝った桶狭間の合戦を、小国日本が列強と対決する際の都合のよい史実として重視した。そして『迂回・奇襲』という、事実ではない創作された作戦と『勝因』を教訓として活用し、同様の作戦を安易に立案し、かえって戦術の基本をおろそかにして、悲惨な結果を招いたという。」
とあります。
年配の人は何度も何度も桶狭間の戦いを引き合いに出され、「勝てる」という思いを刷り込まれたようですね。これは明治期以降の話ですが、そのように、過去の出来事や著名人のエピソードをその時の支配者が都合のいいように利用する(それも合っていようが間違っていようがは重要ではない)というのは、どこにでもあるもので、江戸時代初期にも九州の細川家の領地で利用された加藤清正のイメージなど、まさにそれじゃないかと。たぶん、せっかく解明された桶狭間の戦いについての事実(実際には奇襲じゃなかったとか)は、今後もあまり重視はされないでしょう。信長好きの人たちにとっても、こーゆうイイ話を利用したがる人たちにとっても、それが事実だとしても、都合が良くないのだから。

あとは・・・
小牧山城の築城についての話の中で、
「実はこれより早く、16世紀半ばころには、大名の居城が山に上がる傾向が顕著に見られるようになっていた。」
とあったのには少し驚きました。自分は、日本の城というものは、室町時代に山城が増え、戦国時代になってからはどんどん平城になってくものだと単純に思ってましたから。
戦国時代の末期30年で築城術の格段の進歩があったともありますし、ここらへん、もっと複雑で展開の早い変化があったようですね。

あと、楽市楽座の話も自分が抱いていたイメージがステレオタイプだったと知りました。
「楽市令というと、それまでの座による専売権を否定して、全国に自由営業を広めた政策、と解釈されがちだが、そうではない。読んで分かるように、これは完全に安土に宛てて出された個別法であり、安土に住人を招致するために与えた特権のリストなのである。」
どうも、戦国時代というのは、室町時代に下降しまくって不況が続いていた経済状況が終わり、経済面で成長を見せていた時代だったようです。そういえば、戦国時代が「戦乱」と「飢餓」ばかりの悲惨な時代だったというイメージが実際はどうだったのだろうか、という点に注目して書かれた本がありましたね。新書か選書で。経済の発展の中で、自分の城下町にそれを無理矢理にでも集中させようとしたのが信長だったという理解でいいんでしょうかね。なんというか、チムールがサマルカンドを作った時の話を思い出すような。

室町時代後半に進んだ経済の停滞が、中央権力の衰退と地方政権の強化、つまり各地域ごとの内閉的経済の進行によって起こったという感じなら、たしかにそれで一番困る馬借たち運送業者による蜂起という流れもわかる。本当はどうだか知りませんが。
地域の農民たちが弱体な支配者を望んでる、という話は興味深かったです。たしかに支配者が弱い方が税金は安い! これと土一揆を関連づけて考えたことはなかったです。
この本では信長の無理な武力による統一はあまり当時の人々に受け入れられなくて、それが原因で信長は失敗したし、それよりも地方政権が集まった連邦制の日本もありえたんじゃないかというような話で締めてますが、各大名がなんで自分の領土経営や拡大に精を出したのかとかを考えると、連邦制による安定した状況というのはちょっと無理じゃないかな~、とか思いました。

まあ、そんな話とかが載ってる面白い本です。結論部分がちょっと強引かもしれませんが、話は面白いし読みやすい(ただし、引用部分は現代語訳がないのが多いのでそこだけスムーズさに欠けますが)ので、信長や戦国時代に興味があるなら一読しておくのもよいかもしれません。


参照サイト
小島道裕のホームページ(国立歴史民俗博物館研究者のホームページ)
http://www.rekihaku.ac.jp/kenkyuu/kenkyuusya/kojima/
信長の野望Online 破天の章
http://www.gamecity.ne.jp/nol/
信長王(信長のファンサイト)
http://www.nobunagaou.com/
戦国ごくう
http://www2s.biglobe.ne.jp/~gokuh/
織豊期研究会
http://133.67.82.117/frame.htm
蘇る安土城
http://www.biwa.ne.jp/~minoura/index.html
織田信長に関する総合リンク集
http://nobunaga.kubokoji.com/
ようこそ洞窟修道院へ!
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/6218/
むとうすブログ
http://samayoi-bito.cocolog-nifty.com/mutous/


この記事へのコメント

おーーー
見事に被りましたね(笑)

だいぶ陽気も良くなってきたし
金華山へ登るオフなんてどうですか(^-^;
Posted by 武藤 臼 at 2007年03月30日 00:21

>被りましたね
まあ、2人とも同じコメント見てチェックしましたからね~(笑)

>登るオフ
武藤さんはほんとに見に行っちゃうのが凄いですね。しかも頻繁に!
Posted by 管理人・馬頭 at 2007年03月30日 04:02

いつもながら、馬頭さんの読書の質と量、そしてその感想をすぐテキストにまとめられる力には感嘆するしかないです。甚だ精力盛んなり。僕が人生の中で出会った人々の中でも、かなり上位に来るビブリオマニアだと思いますよ。

『信長とは何か』については、僕も確かに結論が弱いというか、性急な感じは受けました。途中まで極めて綿密な考証を重ねていたのに、最後にお坊さんの旅日記だけであんな先走ったことを言っていいのかね?と。今後はこの間隙を埋めるのが課題になるんでしょうか。

まあでも、全体として面白い本であったことは確かだと思います。特に、城下町についての考察で、法令の内容ばかりでなくそれが書かれた板の材質に着目する部分。流石にプロの目のつけどころは違う、と感心しました。
あと、信長という人物に対して否定的な結論を導き出す一方で、決して彼を悪魔的に描くのではなく、等身大の人物として扱っていたのもよかったですね。特に、岐阜城を宣教師に見せびらかす場面など。
Posted by 奥野 at 2007年03月31日 02:01

>信長とは何か
今回はいい本紹介してくださってありがとうございます。面白かったですよ~。

>お坊さんの旅日記だけであんな先走ったこと
(笑)。ええ、そんな感じでしたね。根拠が弱い部分が他にもいくつかありましたが、最後のはちょっと・・・というまとめかたでした。ずーっと冷静な視点で信長を書いていたのに、最後になって無理矢理結論のために信長否定したような。
でも、目のつけどころは面白いし、文もいいので、また「今後はこの間隙を埋めるのが課題」として書いて欲しいものですね。

>甚だ精力盛んなり。
たぶん、ホンモノのマニアには遠く遠く及ばないでしょうが、最近は少し読む量が増えてます。やはり、テレビがなくなったのが良かったのかと。テレビはつけてしまうとつけっぱなしだし、見てしまいますからね。あと、意識してなるべく歴史本とかの感想を書いていこうとしてます。去年はつい漫画ネタばかりになってしまいましたので。
Posted by 管理人・馬頭 at 2007年03月31日 04:11


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by xwablog | 2007-03-29 02:15 | 書庫
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