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壮大なスケールで描く驚愕の大ウイグル帝国史! 横山光輝『ウイグル無頼』。けど、こんなウイグルは嫌だ
20070304
本日、新宿に新たにオープンしたジュンク堂書店新宿店へ行って買ってまいりましたのが、この『ウイグル無頼』です。作者はあの巨匠・横山光輝氏。

ウイグル無頼_横山光輝

『ウイグル無頼』

(横山光輝。講談社。講談社漫画文庫。2003年。600円)
「ウイグルという広大な大地を自由奔放に生きる放浪者・ヘロデ。彼はある時、財宝が眠るというターゲ神殿の廃墟へとたどり着く。そこには住んでいる村を襲った盗賊団から逃れて隠れているという女がいて、彼女によると財宝は巨大な神殿の最奥にある神像の前にあると言う。ヘロデはその話にも臆した様子もなく、数多の骸骨がそこかしこに転がる不気味な神殿に入っていくのだが・・・」

さーて、いろいろ突っ込むところ満載の漫画がやってきましたよ~。
これは蒸しパンさんが紹介してたので知ったのですが、かなり怪しい漫画だというのに、武藤さんまでもが買ったのを見て、「私も読まねばなるまいて」とか思って手を出してしまいました。

「ウイグル」といえば、中央ユーラシアで活躍したトルコ系の民族のことですが、日本にはあまり情報なかったせいか、今までにもいろいろな誤解を生んだりもしました。代表的なのが『北斗の拳』の「ウイグル獄長」ですが、あれもウイグルという名前にもかかわらず、自分の武術の起源をモンゴル(蒙古)に求めたりしていて、その混同が見られます。
そうした日本におけるウイグル知識の不足が生んだ歴史漫画の異端児。それが『ウイグル無頼』です。

まずはウイグルなのに主人公の名前が「ヘロデ」というとこからして、どうかと思われます。
剛胆で腕の立つ放浪者ヘロデは、どことも知れない「ウイグル」という地方でいろいろな事件に関わって、それを見事に乗り切っていくのですが、人は殺すは女は犯すは、ある時は盗賊になったりと、汚いことも平気でやります。その内、滅亡寸前の巫女の女王が治める国や、双子に王位を奪われる王の国を巡って、それぞれの国を助けたりもします。
そしてある時、いきなり兵士たちに捕まりある国の城壁を作るための奴隷として働かされます。ヘロデは強制労働から逃げ出し、荒れ地を渡って逃げ切ります。さらには盗賊団を率いて奴隷たちに反乱を起こさせ、これがきっかけでこの国を乗っ取り、隣国(先ほどの二つの国)の助力もあって、「大ウイグル帝国」を建設するのです。作中に地図が出るのですが、これが凄くて、東は中国から西はカスピ海までの広大な領土がその版図に収まっています(蒸しパンさんが地図を載せてます。必見)。ヘロデは、一代で大帝国を建設してしまったのです。
だけど、これ、「ウイグル」じゃねーよ。
てか、歴史漫画ですらない。
一部に変な歴史的引用(イラン系の人たちが強力な弓を使って世界を支配したとか)があったりしますが、ともかく歴史とかまったく関係無い、オリジナル作品です。あ、なんか『コナン・ザ・グレート』思い出したりすると感じがつかめるかも。
しかも、最後は思いもよらないあまりにもあまりな結末が待ち構えていて、凄いです。

なんか、『ジャイアントロボ』『鉄人28号』『三国志』などで名高い大作家・横山光輝氏の作品ということで、壮大な歴史スペクタクルを想像しがちですが、実際にはハチャメチャな作品。でも、漫画としては十分に面白いし、自分的には十二分に楽しませてもらいました。

>ウイグル
6世紀頃より以降、モンゴル草原からアルタイ・天山地域に展開していったトルコ系の民族。現在の新彊や甘粛に定着。8~9世紀には東ウイグル王国、9~13世紀に西ウイグル王国を建て、河西地方にも居住した。マニ教、仏教信仰から、15~16世紀までにはイスラムの影響下に入る。仏教文献上では17世紀末までその名がみえるが、民族集団としてのまとまりはなく、1920年代以降、言語や民族の名称として復活した。現在新彊ウイグル自治区を中心に820万の人口がある。
(『角川世界史辞典』P105より抜粋。)

ちなみに現在、イスラム教のことを漢字で「回教」と書くのは、イスラム教徒の多かったウイグル人の漢字での名前「回紇、回鶻」から来てるという話は、どうやら俗説らしい。
私はずっと信じてた。

この記事書いてるときに見つけたんですが、「ウイグル獄長補完計画」というサイトがあって、これが非常に力が入っていて面白いです。ウイグル獄長の漢ぶりを熱く語ってます。

参照サイト
貂主の国
http://blog.goo.ne.jp/north_eurasia/
むとうすブログ
http://samayoi-bito.cocolog-nifty.com/mutous/
ウイグル獄長補完計画
http://warden.x0.com/wigul/

関連記事
エロ小説カテゴリよりむしろSFカテゴリ入りのエロ小説。『鉄車帝国の女囚』
http://xwablog.exblog.jp/8853023


この記事へのコメント

>ウイグル獄長補完計画

これ、すごいなぁ。
お友達になりたい。
私も北斗の単行本は獄長の出てるところ「だけ」持ってます。

>ちなみに現在、イスラム教のことを漢字で「回教」と書くのは、イスラム教徒の多かったウイグル人の漢字での名前「回?、回鶻」から

これは間違いですよ。
「回鶻ウィグル」がイスラムを信仰したことは歴史上一度もないですし、現在も彼らの子孫と見られる「裕固ユーグ」は、主たる宗教はチベット密教です。テュルク系で最初にイスラムに改宗したカラ=ハーン朝とウィグルの関係は証明されていません。

…そんなこと言ってないで「ウイグル無頼」買え、ですとか?(笑)
Posted by 雪豹 at 2007年03月04日 07:23

>ウィグル」がイスラムを信仰したことは歴史上一度もない
えー! マジですか!?
なんか、自分はそう習った覚えがあるんですが~
じゃあ、ずっと間違いを信じてたってことか・・・
ヤ、ヤバイですよ。どっかでおなじネタで話したような気もする。

>回教
「回教」の「回」はどっからきてるんでしょうね~。
Posted by 管理人・馬頭 at 2007年03月04日 09:16
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