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宗教的混乱が広まる16世紀のドイツを舞台に、神秘学的探求の迷路に惑う男を描く。佐藤亜紀『鏡の影』
最近、仕事が少し早めに終わる日が続いていて参ります。いや、早く帰れるのは嬉しいんですが、収入が減るのは困りますから。なんだろうこのままならない不満感は。

それはともかく。
前話題に出た佐藤亜紀氏。『戦争の法』を探して無かったので、こちらにしてみました。

鏡の影 Imago in Speculo 佐藤亜紀

『鏡の影 Imago in Speculo』

(佐藤亜紀。ビレッジセンター出版。2000年。1900円)
「農家から出て自らの知的欲求を満たそうとした少年ヨハネスは、おじが参事会員を務める街へ行き、まともな教育を受ける。しかし、おじが政争で敗れると、彼はレヴニッツのヨハネスとしてその知恵を堕落させることになる。だが、ある時、謎の少年シュピーゲルグランツと出会い、再び世界の神秘を求めることになり・・・」

宗教改革がはじまったばかりの頃のドイツ(及び少しだけイタリア)が舞台となっている作品。
佐藤亜紀作品はこれがはじめてですが、こんな作品があったとは知らなかったです。もっと早く知りたかったですね。
世界の最も重要な秘密、世界そのものの要点たる秘義を手に入れようと、知的探求をする男の物語なのですが、その物語全体のなんというか、皮肉じみたというか、斜に構えたというか、おどけた真面目さというか、そういったものが非常に楽しかったです。それにこの話、『ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』みたいな当時の物語的要素をたっぷり使ってて、ニヤニヤさせられました。

ところで、作者はこの作品を、平野啓太郎の『日蝕』にパクられた、と言っています。新潮社ではじめ出て、そのすぐ後に新潮社が『日蝕』を大々的にとりあげて、こっちは干されたと(そんなことありえるのか?)。だから、初出は1993年だそうです。
読んでみた感じで分かるかと思ってたんですが、どうも『日蝕』の方の内容をすっかり忘れてしまっていて、似てたかどうか分からずじまい。でも、まあ、『鏡の影』の方が今風の小説として面白かったですよ。比べるなら「日蝕」の方は「文学」作品ですね。
画像のリンクは2003年のブッキング版です。

(追記・これについて検証サイトみたいのはないけど、2chで類似部分を取り上げてた。ただ、それを見た限りでは、ほとんど言いがかりです。その程度の類似でパクリ認定されるというなら、何でもパクリですよ。なんでこんなこと言い出したんだろ? 平野側もこれについて、そんなことないよ、とサイトに書いています)

作者の佐藤亜紀氏は、大学で西洋美術(18世紀の美術批評)をやってたそうで、そこらへんの詳しさや、歴史に関する詳しさ、ネタの使い方が堂に入ってる感じです。
『バルタザールの遍歴』というので、第3回日本ファンタジーノベル大賞受賞してます。
HPみるかぎり、かなりの毒舌家。でも嫌みは薄く、その突っ込み方は鋭い。

そうだ。そろそろコミケの申し込みの締め切りか?
急がないと。


参照サイト
佐藤亜紀公式 新大蟻食の生活と意見
http://home.att.ne.jp/iota/aloysius/tamanoir/

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by xwablog | 2007-02-06 00:53 | 史劇
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