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ヘラクレイオス朝のこととか。『史学雑誌』第79編-第12号
20070118

また『史学雑誌』です。あ、これ、表紙は毎回同じようなものなので、流用です。

史学雑誌100_1

『史学雑誌』第79編-第12号
(史学会。1970年)
「ヘラクレイオス王朝におけるビュザンティオン世界の成立」杉村貞臣
「承久の乱後の新地頭補任地(拾遺)--承久京方武士の一考察・補論」田中稔
「第13回国際歴史学会議報告」村瀬興雄
「ワルシャワにおける国際代表制度史学会について」磯見辰典
史学会第68回大会記事

「ヘラクレイオス王朝におけるビュザンティオン世界の成立」は『ヘラクレイオス王朝時代の研究』などの杉村貞臣氏(今も関西学院大?)。いままでのビザンツ史研究の中でヘラクレイオス朝がどのように定義されてきたか、ユスティニアヌス帝時代からの流れでのヘラクレイオス朝の成立と状況、当時の内的及び外的な出来事がどのようにして影響したか、などについて書いてありました。
従来よく見られたローマ・ビザンツ史の3期分割ではなく、2段階に分けて見る方法、つまりローマ帝国そのものだった時代とローマ帝国としての有り様が残っていた時代を前半とし、その後地中海東部、とくに小アジアとバルカンに勢力が限定されてからのギリシア的・キリスト教的なビザンツ帝国の時代を後半とする見方を示し、その転換点がヘラクレイオス朝だった、という話を順序良く分かりやすく解説してくれてます。

4世紀、当時ローマ帝国に組み込まれていたギリシアでは、テッサロニキを中心としてキリスト教も広まっていたけど、それでもやはりギリシア文化は併存してあった。けど、ローマからビザンティウム(コンスタンティノープル)への遷都した後、意識的にローマ文化そしてキリスト教に重きをおいて、コンスタンティノープル及びその周辺がしっかりとギリシア文化圏でありながらも、そうした要素を排除した帝国を作っていく。しかし、その後の外圧などでラテン文化圏とオリエント文化圏を喪失し、方針を転換して再度ギリシア的要素を「導入」していくことに。
その動きがとくに現れているのがヘラクレイオス朝というわけです。
今まで、それほど「どんな王朝だったのか」なんて考えたこともなかったのですが、なんとなくイメージがつかめそう。これ、1970年の本だから40年近く前の記事だけど、現在の研究ではどうなってんだか。

まあ、とても面白かったので、『ヘラクレイオス王朝時代の研究』は読んでみたくなりました。


「第13回国際歴史学会議報告」もちょろっと読んだのですが、これ、モスクワで開かれたやつでした。会の様子などが報告されていましたが、日本からは90人も出席してたとか。開場はモスクワ大学なんですが、ホテルはロシアホテルとウクライナホテルだったとか。もっと近くにホテルなかったのか、それとも宿泊先が限定されてたのか。『河童が覗いたヨーロッパ』の時にも書いた気がしますが、当時のソ連では宿泊先は自分では決定できなかったようです。
大会の初っぱなに議長とかの挨拶の後、「レーニンと歴史」という講演が行われるというのも雰囲気があっていいな。聞いた参加者たちにとっては迷惑だろうけど。
他にも冷戦時代らしい東西両国の学者たちによる批難合戦みたいのとかがあったらしくて燃えます。あとボイコットした国とかもあるという。

「・・・この主張は西欧側としては常識的な見解であるが、ソ連側の激怒を招いた。ラフトの説明がまだ続いているのに、ソ連の学者がマイクロフォンをつかんで『あなたはわが国の政府を侮辱した』と叫んだ。」

まあ、そういう時代だったのでしょう。
それよりも、古代史部会とかがもりあがらなかったらしく、そこらへんの内容紹介とはは全然無いのでがっくり。中世史に関してもほとんど無し。


参照サイト
日本ビザンツ学会
http://homepage.mac.com/nikephoros/
ビザンティン帝国同好会
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Labo/9837/

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