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古代中東史はやっぱり面白い。大村幸弘『鉄を生みだした帝国 ヒッタイト発掘』
最近、起きるべき時間より前に起きてしまうことが多いです。しかも、自分で何してるのかわかってないまま、なんか色々してるみたい。目が覚めたらPCの電源がついてるなんてのはよくあること。暑い日には、服を脱いでるとかも。この前は異様に喉が乾いて、何杯も何杯も飲み物を飲み続けたり(しかも、3度寝、4度寝しては、喉の渇きで目が覚めるということの繰り返し)。
でもこの頃は寒くなってきたせいか、布団からは出ることは少なくなりました。そのかわり布団の中で服脱いでたりとかはありますが。まったく寝てる間に何してるかわかったもんじゃありません。

それはともかく。
中近東文化センターの所長、大村幸弘氏がけっこう前に書いた本を読みました。

鉄を生みだした帝国 ヒッタイト発掘

『鉄を生みだした帝国 ヒッタイト発掘』

(大村幸弘。NHKブックス。1981年初版。これは1996年の第13版。850円)

日本のヒッタイト(ハッティ)の第一人者。NHKの『文明の道』でも出演してましたね。
この本は、1981年に出たやつの新版みたいです。
1970年代にトルコに留学。トルコ語もままならないのにヒッタイト語もやらないといけないという状況で、何年も向こうで発掘したりしてたという経験を書いた本です。
ヒッタイト史についてというより、考古学的苦労話。とても話が面白く、ヒッタイトの街の名前についての謎に迫っていく、という感じが楽しかったです。
ヒッタイト史に限らず、古代史においては、当時の名前、つまり古名がわかってない場合が多いそうです。遺跡が発掘されているのに当時の名前がわかんなかったり、文献とかで名前はたくさん出てくるのにその場所がわかんなかったり。そんな中、ヒッタイト帝国の重要な宗教都市であるアリンナがどこか、ということを考察していく様子が描かれています。
アリンナは都市名であると同時にヒッタイトの守護神で太陽の女神の名前。
ヒッタイトというと当時のオリエント世界で製鉄技術をもってして勢力を拡大したという国ですが、実際に製鉄してたのかはっきりしてないじゃないか、ということで製鉄を行っていた場所を特定しようとして、それが「アリンナ」だろうと予測。そのアリンナがどこにあるのかを推測したわけです。
結論からいうと、アラジャホユック遺跡というすでに発掘されていた遺跡がそうだろうということになりました。ここはヒッタイト帝国の首都ハットゥシャ(現在のボアズキョイ)から50キロくらいの場所にあります。考えてく上で、防衛に適し、1度も敵の手に落ちたことがなく、製鉄に適した街、の全部をクリアし、文献の上で登場する鍛冶師のいる街アリンナに相当する場所、ということで、ここがわかったのです。墓から鉄製品も出てるし、炉もあれば鉄滓という製鉄した後に出るものも出土し、だいたいここだろうということになっています。
このことが結論に至るまで、数年がかりというからやっぱり考古学は大変だなぁ。
実際に現在の研究ではどうなのか知りませんが、大村氏によると、アリンナの住民はヒッタイト以前に住んでいた人々「プロトヒッタイト」だったが、それをインド・ヨーロッパ語族系の「ルトゥ」が征服し、そのすぐ後にヒッタイトがやってきて、ルトゥを滅ぼし製鉄技術を持っていたプロトヒッタイトを服属させたと考えられるとか。製鉄に関する言葉の語源がヒッタイトではなくプロトヒッタイトの語彙になってるそうなので、実はヒッタイトはもともと製鉄技術を持ってたわけではなかったとのこと。

そういや、ヒッタイトものの漫画といえば『天は赤い河のほとり』ですが、やはり大村氏の著作も参考にしてるみたいですね。多少自分の中の情報増えたので、また読みたいなぁ。

あと、今こんな展示が中近東文化センターでやってます。前にペルシャ文明展で貰ったチラシ忘れてました。

古代ユーラシアの青銅器のチラシ

『古代ユーラシアの青銅器』
中近東文化センター(東京都三鷹市)で、9月23日~2007年2月18日までやってます。
講演会で面白いのがあるので、どれか狙っていければいいのですが、バイト先の現状だと予定も建てられんです。

講演会(各会共14:00~15:30 聴講料 500円)
第1回 10月1日(日)ペルセポリスの栄華と青銅器 足立拓朗(中近東文化センター研究員)
第2回 10月29日(日)グリフィンと青銅器—ギリシア・アルカイック期を中心に— 林俊雄(創価大学教授)
第3回 11月5日(日) 中国北方の青銅器(仮題) 高浜秀(金沢大学教授)
第4回 11月12日(日) コーカサスの青銅製帯とスキタイ 雪嶋宏一(早稲田大学図書館司書)
第5回 11月19日(日) 中近東の青銅製武器 足立拓朗
第6回 12月3日(日) 南インドの青銅器時代 上杉彰紀(関西大学講師)
第7回 1月14日(日) 殷周青銅器(仮題)  飯島武次(駒澤大学教授)
第8回 1月21日(日 我々における青銅器時代の意義 川又正智(国士舘大学教授)
第9回 2月4日(日) 中央ユーラシア中部の青銅器  畠山禎(横浜ユーラシア文化館学芸員)
第10回 2月18日(日)最古の文明メソポタミア文明と青銅器 足立拓朗

この中だと、やっぱり最後メソポタミアのか4回目のコーカサスとスキタイものかな。5回目も面白そう。というか、これ気付くの遅すぎたようで、第1回のペルセポリスものを逃してしまった・・・。残念。



参照サイト
大村 幸弘 氏略歴(大同生命国際文化基金)
http://www.daido-life-fd.or.jp/06_omura.html
シルクロード見聞録
http://ww5.enjoy.ne.jp/~s-mattsun/index.htm
ヒッタイトへの旅(シルクロード見聞録)
http://ww5.enjoy.ne.jp/~s-mattsun/kouza/kouzabk04.htm
トルコへの糸(同上)
http://ww5.enjoy.ne.jp/~s-mattsun/essei/esseibk04.htm
アラジャ・ホユック(NENES WORLD)
http://www002.upp.so-net.ne.jp/nene/ten/toruko/5/arajya.htm
スパークリング・トルコ
http://homepage1.nifty.com/endow/all_turkey/all_turkey_main/all_turkey_main.html
中近東文化センター
http://www.meccj.or.jp/

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この記事へのコメント
喉が乾いて起きるって、それはちょっとやばくないですか?あんまり続くようなら調べてもらった方がいいかもしれないですよ。
あと、知らぬ間に服を脱いでいる件については、夢魔に襲われている可能性を考慮した方がいいのかも。

僕も、考古学関連の本には推理小説的な面白さがあると思います。『白樺の手紙を送りました』とかもそうですが、文書に比べると「物言わぬ」資料である考古学資料を縦横に駆使し、まるでパズルを組み立てるような形で過去を再現していくという。ただ単に掘って見つけるだけではなく、発見したものを基礎に理詰めで論を展開していかなければならないわけで、考古学者には独自のセンスが求められるのでしょうね。
Posted by 奥野 at 2006年10月22日 17:33

この本の続編ともいうべき「アナトリア発掘記」もなかなか面白いですよ。鉄にこだわって追い続けた「鉄を生み出した帝国」の後、単に鉄に関する物を求めるだけでなく、一つの遺跡をじっくりと堀り、文化編年を作ることを目標に据えて可能な限り遺物を残していく方向で発掘を進めている様子が書かれています。鉄についても、ヒッタイトに鋼が存在したらしいということが書かれているので、前著との繋がりもあります。
Posted by ひで at 2006年10月22日 21:52

>考古学
確かにパズル的要素があって面白いんですよね。これがこうだからこうなって、という解明していく過程が良いというか。
最近、いろいろなパターンの探偵小説が出てますが、そのうち考古学探偵なんてのも出てくるかも。結構似合うかも。

>アナトリア発掘記
おお、そーいうのもあるのですか。読んでみないと。
発掘とかしても、こういう風に本にしてもらわないと、知る機会すら無いから、続きもの的な感じで出してくれるのは嬉しいですね。

>渇き
何が理由なのかさっぱりです。結構寝汗かくのでそのせいとか?

>夢魔
いつの間にか脱がされてる! とかではなく、やっぱりこれも汗っかきなせいかと。
Posted by 管理人・馬頭 at 2006年10月22日 23:4
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