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先日、雨の日に古本屋に行ったら傘立てに立てておいた傘をパクられた間抜けとは私のことですよ、皆さん。
店に入るとき、ずっとこっちを見てた薄汚いおっさんがが盗んだんだと思います。くそう。 そういや、昔、神保町のコミック高岡で、傘を盗まれそうになった男が傘持ってった学生を追っかけて怒鳴ってる場面を見たことがあります。その気持ちがよくわかる。 それはともかく。 『リチャード二世 Splendour of KING』 (蒲生総。角川書店。ASUKAコミックスDX。1998年。520円。174ページ) 「14世紀のイングランド。エドワード黒太子の息子リチャードは、わずか10歳で王位に即く。ランカスター伯ジョンをはじめとした多くの叔父や、大人たちの中で、気弱な彼は戸惑うばかり。偉大な父の影が見え隠れするたびに、強くあるよう望まれることを重荷に感じるのだった・・・」 蒲生総氏の中世英国史漫画。エドワード黒太子の息子で、子供の頃に王位についたリチャード2世が主人公です。前作『ガーター騎士団』が多少笑いありだったのに対して、こちらはずっとシリアス調。 エドワード黒太子の次男として生まれたリチャードは、兄が夭逝したため、祖父で英国国王だったエドワード3世が死亡した時にリチャード2世として即位することになります。父は前年に死亡してしまっていたのです。 一話目「リチャード2世 Reign of Richard II」は即位してからワットタイラーの乱まで、二話目「リチャード2世 Queen Ann」は神聖ローマ帝国のカール4世の娘で、リチャード2世の妃となったアンの視点で、リチャード2世の親政とその失敗までを描きます。 エドワード黒太子というカリスマ的人物と長くつきあってきた叔父たちや家臣たちは、柔弱なリチャードに強くなるように言うのですが、プレッシャーを受けたリチャードは思い悩みます。 従兄弟のヘンリーも彼を支えてはくれるものの、リチャードは親族以外を重用したりといった失政のためいろいろ苦労することに。ちなみにこのヘンリーが、のちにリチャード2世を廃位してヘンリー4世になります。これがプランタジネット家の断絶、ランカスター朝のはじまりとなります。 世界観が前作の『ガーター騎士団』を引き継いでるので、王族たちはあまり悪く描かれません。どうも、ランカスター伯ジョンはもっと癖のある人物だったようですね。 シェイクスピアも英国の三人の王を描くシリーズの一作目で『リチャード2世』という作品を書いてるそうです。(これのシリーズを他の二人が『ヘンリー4世』と『ヘンリー5世』なので、研究者たちは『イリアッド』ならぬ『ヘンリアッド』と呼んでるとか) この作品、第一巻となっていますが、これしか出ていません(一話ごとで話が区切れてるので中途半端ではないのですが)。苦悩する少年王を描く話としてなかなか良かったのですが残念です。これは掲載雑誌『歴史ロマンDX』の休刊が影響しているのでしょうか? そういや、この本あたりから蒲生総氏の画力が格段に上がった感じがします。ぜひとももっと描いてほしかったですね。てか、『天上の恋』とかが復活したなら、こっちもどうでしょう? ちなみにこの単行本には『リチャード二世』の話が2本と、「騎士と剣と円卓と」と「サー・ガウェインと醜いお姫様」というアーサー王関連の短編も描いています。 蒲生総氏は『ガーター騎士団』や『リチャード二世』の他にも、英国史ものを描いてますが、他の英国ものじゃない単行本の巻末とかに含まれてたはず。「フランスの雌狼」ことマーガレット・オブ・アンジューの話とか。 ついでに。 リチャード2世の妃で、良い王妃として知られたアンですが、彼女はカール4世の娘で、皇帝ジギスムントの同母姉でもありますね。「アン・オブ・ボヘミア」と呼ばれています。結婚して数年くらいで死んじゃう人。彼女が来るにあたって、リチャード2世は異母兄の皇帝ヴェンツェルに2万フロリン払ったとか。 作中でリチャード2世の同年代のよき理解者として登場する、のちのヘンリー4世ことハリーですが、彼は、1390年から1392年にかけて、なんとドイツ騎士団のリトアニア遠征に参加しています。この時の遠征で病気になって、それがのちのちに原因となって死亡します。 どっちも意外なところで意外な人に東欧関連の話が。 参照サイト ASUKA 月刊あすか http://www.kadokawa.co.jp/mag/asuka/ リチャード2世(wikipedia) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%892%E4%B8%96_(%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E7%8E%8B) 関連記事 騎士道のかっこよさをエドワード黒太子視点で描く。蒲生総『ガーター騎士団 Splendour of KING』全3巻 http://xwablog.exblog.jp/10041406/ ついに完結! カスティリア王ドン・ペドロの栄光と結末。青池保子『アルカサル----王城-----』第13巻 http://xwablog.exblog.jp/7448608 中世を舞台に諸国が覇権を争う!ヨーロッパ最高皇帝を目指せ!『Knights of Honor(ナイツオブオナー』 http://xwablog.exblog.jp/7516575 物語性のある魅力的なイラストで知られた歴史&FT系イラストの大作家アンガス・マックブライド氏が死去 http://xwablog.exblog.jp/9158568
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| 2008-12-15 23:17
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